国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)の報告については、すでに別の記事で紹介したが、ここでは、「男系男子」が皇位を継承することを定める皇室典範の改正を勧告し、悠仁さまを押しのけて愛子さまを天皇にすべきだとしたとの誤報について説明したい。
この報告が「愛子天皇」実現に向けた追い風という受け取り方もあるが、それは次の三つのことからも、正しくない。
そのことをダイヤモンド・オンラインの記事で紹介したのでご一読頂きたいが、ここでは、そのエッセンスと補足を書く。
この国連の報告は、あくまでも委員会としての希望であって拘束力はないし、どこの国でもさして重用していない。
しかし、それより重要なことは、「他国の事例を参照」にしろといっていることである。
たしかに、1990年代から男子優先が欧州諸国で後退する傾向にあるのだが、新原則は、制度改正以降に生まれる王族にのみ適用されている。
つまり、欧州諸国に準拠すれば、立皇嗣礼まで行われた秋篠宮皇嗣殿下、さらには成年を迎えられた悠仁さまへの継承には影響はなく、悠仁さまの次の世代の継承のときに初めて問題になる話だ。
現在、欧州にいは7王家があるが、それぞれの事情について記事で紹介しているが、ここでは、とくに重要なものを紹介する。以下のようになっている。。
最近、ノルウェー国王第一子のイングリッド・アレクサンドラ王女が米国人の霊媒師と結婚して世界を震撼させた。だが、1990年の改正で男女問わず長子優先になったものの、改正以降に生まれた子にのみ適用されるので、弟のホーコン皇太子が継承することが決まっており、ノルウェー王室は事なきを得そうだ。
英国の王位継承法は、2013年に改正され、男子優先の長子相続(女王は可能だが、弟がいればそちらを優先)から男女平等の長子相続となった。
ただし、2011年10月28日以降に生まれた王族のみに適用される。ウィリアム王子の子は、長男のジョージ王子、長女のシャルロット王女、次男のルイ王子と生まれた順だが、チャールズ国王の兄弟では、2番目のアン王女およびその子孫より3番目のアンドリュー王子、4番目のエドワード王子およびその子孫が優先順位を保持している。
オランダの王位継承法も1983年に改正され、新しく生まれる子は長子優先になった。だが、当時のベアトリクス女王の長子はウィレム・アレクサンダー現国王であり、その子は王女3人だけなので、新原則が故に継承順位が変わることはなかった。
スウェーデンではカール16世グスタフ王の子として、長女ヴィクトリア王女に続き、カール・フィリップ王子が生まれ、国内での激しい議論の末、国王の反対を押し切り、ヴィクトリア王女が将来の女王とされた。
このスウェーデン王室のケースが、すでに生まれた子に適用した順位変更の唯一の例だ。とはいえ、順位変更は物心つくまでに行うべきだということで、カール・フィリップ王子が5月に誕生後、11月に法律改正、翌年1月に発効した。
したがって、すでに成年に達している悠仁さまの前例にはなるまい。
スペインでは伝統的に国王の子のなかで男子優先だが、女子だけなら女王となることになっており、現在も同じだ。現国王のフェリペ6世には2人の王女しかいないので、長女のレオノール王女が皇嗣であり、女性ながら職業軍人としての訓練を受け王位継承に備えている。
スペインは、2度も王制が倒れて共和国になるなど、何かと不安定だ。とくに、19世紀において、国王には王女しかいなかったため、弟でなく自身の王女に継承させたところ、内乱(カルリスタ戦争)が起き、王制転覆につながった苦い思い出がある。
一方、男子優先については国内で改正論もあり、CEDAWから勧告されたこともあるが、無視されている。CEDAWの委員長はスペイン人のアナ・ペラエス氏で、彼女が母国の状況に影響を与えたいために日本の皇位継承について言及することに固執したともいわれる。
いずれにせよ、CEDAWの勧告に従って欧州各国の例にならったところで、遡及適用はしないのが国際常識だということこそが重要である。現実として、悠仁さまは将来の天皇として厳しい帝王教育を受けられており、心身ともになんの問題もない。
日本では、上皇陛下退位のときに制定された新たな法律にもとづき秋篠宮殿下が「立皇嗣礼」まですまされ、皇太子と同様であることを明確に定めたのである。その長男である悠仁さまが将来の天皇としての歩みを重ねておられるのを中断させる合理性は何もないし、その変更の可能性を議論するだけでも、国民の分断を招く。
ただ、悠仁さまのあとも、順調に継承が行われるとは限らず、その場合に、旧宮家の人々によって伝統的な男系男子継承を守るのか、女系継承も可とするのかは、今後の課題だろう。
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