1. 中東・CISとは
前回は、北米・欧州の国・地域について1人あたりGDPの国際比較をご紹介しました。
北米・西欧・北欧はかなり高い水準に達していますが、リーマンショックを機に変調する南欧や、少しずつ成長を重ねている東欧など、地域内での差も少しずつ縮まっているようです。
今回は、中東・CISの1人あたりGDPについて国際比較してみましょう。
地域の区分は外務省のホームページを参照し、次のような区分としています。(参考ページ: 外務省 国・地域)
<中東>
アフガニスタン | アラブ首長国連邦 | イエメン |
イスラエル | イラク | イラン |
オマーン | カタール | クウェート |
サウジアラビア | シリア | トルコ |
バーレーン | ヨルダン | レバノン |
CISは外務省の区分では欧州に属しますが、今回は地域の近い中東諸国と同じグループとして区分しました。
<CIS>
ロシア | ベラルーシ | モルドバ |
ウズベキスタン | カザフスタン | キルギス |
タジキスタン | アゼルバイジャン | アルメニア |
トルクメニスタン |
2. 1人あたりGDPの推移:為替レート換算値
まずは中東・CISの国・地域について1人あたりGDP(為替レート換算値)の推移から見てみましょう。
図1が中東・CIS地域の1人あたりGDP(為替レート換算値)です。
参考までに日本(青)も表記しています。
アップダウンが激しいですがカタールやアラブ首長国連邦の水準が高い事がわかります。特にこれらの国々は1980年頃に非常に高水準に達していたのも特徴的です。
近年ではイスラエルが日本を超え、クウェート、サウジアラビア、バーレーンもかなり近い水準に達しています。
ロシア、トルコは概ね同じくらい、イランは2023年で5000ドル弱といった水準ですね。
3. 1人あたりGDPの国際比較:為替レート換算値
続いて、特定の年での水準を国際比較してみましょう。
まずは1997年からです。
図2が1997年の国際比較です。
上位にはイスラエルの他に、アラブ首長国連邦、カタール、クウェート、バーレーン、サウジアラビア、オマーンと原油産出国が並びます。
同様に資源大国であるイランとロシアの水準が、これらの上位国と比べてかなり低いのも印象的です。
当時はアラブ首長国連邦でも日本よりも低い水準だったことになります。
図3が2023年の国際比較です。
カタール、イスラエル、アラブ首長国連邦の3国が日本を大きく上回ります。
クウェート、サウジアラビアが日本と同じくらい、バーレーンも相応の水準に達しています。
ロシアやトルコは12,000ドルを超える水準ですね。
地域内の差が大きいのが印象的です。
4. 1人あたりGDPの推移:購買力平価換算値
続いて、購買力平価換算値についても眺めていきましょう。
まずは、代表的な国・地域の推移からです。
図4が中東・CISの1人あたりGDP(購買力平価換算値)の推移です。
カタールやアラブ首長国連邦の水準が極めて高く、アップダウンが激しいのが印象的ですね。
2010年前後で、上位の産油国の水準が概ね下がっているという特徴がありそうです。
1980年代から日本の水準を超えていた国も多いですね。
イスラエルは近年急激に上昇していて、2020年に日本を上回ります。
5. 1人あたりGDPの国際比較:購買力平価換算値
続いて、特定の年での国際比較をしてみましょう。
まずは1997年です。
図5が1997年の1人あたりGDP(購買力平価換算値)の国際比較です。
アラブ首長国連邦やカタールは8万ドルを超え、日本の数倍の水準だったことになります。
サウジアラビア、バーレーン、オマーンも日本を超えていました。
イスラエルは当時18,724ドルで、ここからの伸びが大きく2020年には日本を上回る事になります。
トルコ、ロシアは10,000ドル前後の水準だったようです。
図6が2023年の国際比較です。
カタール、アラブ首長国連邦は変わらず高い水準ですが、サウジアラビア、バーレーン、イスラエル、クウェートが日本を超えます。
オマーンが日本を下回っているのが非常に興味深い変化ですね。
トルコ、ロシア、カザフスタンも1997年の水準からすると大きく上昇していて、日本と相応の水準にまで達しています。
6. 中東・CISの1人あたりGDPの特徴
今回はIMFのデータベースから、中東・CISの国・地域について1人あたりGDPの国際比較をしてみました。
アラブ首長国連邦やカタールなど産出国では非常に高い水準に達している事が良くわかりました。また、イスラエルは順調に上昇していて近年では日本を超えます。
ロシア、トルコ、カザフスタンも上昇傾向が続いていて、特に購買力平価換算値では日本に及ばないながらも相応する水準に達しています。
地域内の格差が大きいように見受けられます。
今後どのように推移していくのか大変興味深い地域ではないでしょうか。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年11月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。