他人からの厳しい指摘や批判は、上手く扱えば自分の成長発展の原動力になるが、真に受ければ自滅へとつながってしまう。著者は「他人の評価」の正しい扱い方こそが、パワハラやモラハラに負けない力を養い、メンタル疾患の予防になるという考えに至っている。
『無双のメンタル シリコンバレーで学んだ「他人の評価」に振り回されない生き方』(宮崎直子 (著)/光文社)
[本書の評価]★★★★(80点)
【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
他人の評価はメンタルにとって諸刃の剣
私たちは好むと好まざるとにかかわらず、日々、他人の評価に晒されています。友人の何気ないひと言や、上司からの叱責など多岐にわたります。宮崎さんは次のように言います。
「他人の評価は扱い方しだいではあなたを励まし、あなたが成長発展するヒントを与えてくれます。一方で、扱い方を間違えると、それはあなたの停滞、ときには生死にかかわる問題に発展してしまいます」(宮崎さん)
「SNSで中傷を受け自ら命を絶ってしまう、上司の心ない批判や叱責を受けてメンタルをやられてしまう。幼い頃から親に暴言を浴びせられ自分には生きる価値がないと自暴自棄になってしまう、などが挙げられます」(同)
悲しいですが、そんなことが日々、日本の、そして世界のどこかで起こっています。一方で、アンチの声はものともせず笑顔で活躍し続けるタレントもいます。上司の不当な批判には耳を貸さず、人事に訴えたり、さっさと転職したりして、どんどんキャリアを積んでいるビジネスパーソンもいます。何が違うのでしょうか?
「何が起こっても、自分の人生を100%謳歌する人。おひとりさまを思う存分楽しむ人。 受験に失敗しても、何事もなかったかのように次々と新しいことに挑戦し活躍する人。真逆の人々が存在することも事実です。自滅してしまう人と、人生を思う存分楽しんで成長していく人。その二者の違いは、どこから来るのでしょうか」(宮崎さん)
自分の方法を確立せよ
筆者は、メンタルが強くはなかったが、扱い方は上手かったのだと思う。本にも載っていないようなことを色々と試すのがいいだろう。筆者は「睡眠」が効果的だった。どんなストレスでも十分な睡眠をとることである程度は軽減できた。睡眠が十分になれば、社内でのトークや立ち居振る舞いにもパワーがみなぎる。
たとえば、上司になる人物は、何かしら過去の栄光……、いわば武勇伝がある。武勇伝は嫌われるという意見もあるがとんでもない。上司の武勇伝こそ有難く拝聴すべきものである。ただし、いきなり「武勇伝を聞かせてください!」とお願いするのでは、芸がない。お酒の席で聞くにしても、この聞き方では直球過ぎて上司も戸惑うだろう。
武勇伝を聞くのは、上司の自分に対する評価を上げるため、どうせ聞くならもっとも効果的な聞き方をしなければ得策とはいえない。私ならこう聞くだろう。
「部長。実はここ数ヶ月、ブラック商事(仮名)に営業を仕掛けていたんですが、商談が不成立になってしまいました。部長は営業のスペシャリストと役員がいっていたのを小耳にはさんだのですが、今後の参考のために武勇伝をお聞かせいただけませんか?」
「教えてください」と依頼するだけではなく、言葉にふくみを加えて、上司の自尊心をくすぐることが大切であることは言うまでもない。
本書は、アラン・コーエン氏(著作家、ライフコーチ)の考えがベースにある。クライアントの心に寄り添い、彼らが対峙している問題の解決や、人生の質の向上を助けるためのコーチングをこの機会に味わってみよう。おススメできる良著である。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)