厚生年金の積立金が基礎年金3割底上げに流用:年金改革は現役世代の負担増へ

厚生労働省は、年金制度の持続可能性を高めるため、基礎年金の底上げや厚生年金の制度見直しを柱とした改革案を示しました。この改革では、財政余裕がある厚生年金の抑制措置を延長し、その浮いた財源を基礎年金に充てることで、基礎年金を3割底上げする方針です。しかし、これに伴い現役世代、とくに高所得者の負担が増加する見込みです。

参照:基礎年金3割底上げ、厚労省が提示 厚生年金の財源活用 日経新聞

複雑すぎる年金勘定

政府・野党ともに「手取りを増やす」との方針を掲げていますが、実際には中小企業の従業員に対し、社会保険料の負担増加が進められています。2024年10月から、従業員数51人以上の企業に対して、パート労働者への社会保険適用が拡大されました。これにより、パート労働者は本人負担分15%と企業負担分15%を合わせた約30%の負担増となり、手取り収入が減少してしまいます。

基礎年金の底上げには、国庫負担(税金)も必要で、今後100年間で総額70兆円が見込まれています。さらに、厚生年金の「標準報酬月額」上限を引き上げることで、高所得者の保険料負担が増加し、年収798万円以上の対象者では月額9000円の負担増が見込まれます。

ねんきん定期便には会社が負担している保険料の額が記載されていません。実際には、記載されている本人負担分の倍額が保険料として支払われている状況です。社会保険料は本人負担分が15%、企業負担分が15%となっていますが、実際にはこの全額がパート労働者の負担として現れているといえます。

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年金受給者に適用される「公的年金等控除」は、年金収入から一定額を控除する制度であり、所得税や住民税の負担を軽減する役割を果たしています。この控除は、年金受給者の生活費や医療費などの支出を考慮し、税負担を和らげる目的で設けられています。しかし、年金受給者の税負担軽減策が現役世代の負担増加につながっているとの指摘があります。

今回の年金改革では、基礎年金の強化により低年金リスクを軽減することを目指していますが、現役世代、特に高所得層への負担増加が避けられない内容です。その中で、2024年10月から従業員数51名以上の企業まで適用範囲が拡大された社会保険料負担がパート労働者に重くのしかかる現状が浮き彫りになっています。

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パート労働者全員(推定200万人)が新たにこの負担を強いられます。「週20時間の壁」の撤廃も時間の問題と思われます。