週末の7月30日は土用の丑の日ということで、週末の銀座のうなぎ店にはいつもよりかなり長い行列が出来ていました(写真)。うなぎは私も大好物ですが、年々価格が上昇して、今や高級料理になってしまいました。
のぞみの車内でも読むことができる硬派のビジネス誌「WEDGE」では、日本人の土用の丑の日信仰の問題について取材しています。
日本国内に入っているうなぎの稚魚(シラス)の多くは、実は台湾から密輸によって香港に流れ、そこから国内に輸入されているそうです。それを日本の養殖場で成長させて、販売しているのが「国産うなぎ」の実態です。
天然なら0.2グラムほどのシラスが出荷サイズの200~250グラムになるのは5年ほどかかります。ところが、ビニールハウスとボイラーを使って、温水で、エサを与え、太らせる養殖だと、何と6~7カ月ほどで出荷サイズになるそうです。
土用の丑の日が7月下旬なので、1月中旬までには養鰻をはじめなければ、半年後の書入れ時に間に合いません。日本のシラス漁の最盛期は、1月下旬~2月上旬が一般的で、これでは土用の丑の日に間に合わない可能性があります。ところが、台湾は日本より南にあって、シラスの漁期が早いので、土用の丑の日に間に合うシラスとして高値で取引されるのです。
このような土用の丑の日に間に合うシラスは、数年前から1キロ300万円を超す高値になっているそうです。これは日本の特定の日の特需が原因です。
日本で土用の丑の日が宣伝され、うなぎの消費が集中すればするほど、台湾から密輸されたシラスの価格が高騰し、それによってうなぎが手の届かないものになっていってしまうという構図です。だから、土用の丑の日なのでうなぎです、などとSNSに投稿している人を見つけると何だか複雑な気分になるのです。
ニホンウナギだけでなく、ヨーロッパウナギ、ビカーラ種といった世界各国で採れるうなぎは絶滅危惧IA類、準絶滅危惧などに分類されているのは、日本人がうなぎを食べ続けてきたことも原因の1つだと考えられています。
平賀源内が夏のうなぎの販売促進のためのマーケティングとして考案したと言われる土用の丑の日。炎天下に夏バテ防止にうなぎを食べようと行列に並んでいたら、暑さでバテてしまった。そんなことになるくらいなら、タイミングを外して、うなぎを食べた方が良いのではないか。行列を横目に見ながらそんなことを考えました。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年8月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。