2025年の為替相場にサプライズはあるか?:日本の物価高の好転は望み薄

2025年の為替相場と言ってもそう簡単には当てられないし、為替予想をそれなりのピンポイントで予想するのはAIを駆使しても難しいと思われるのはプロの方であればあるほど実感しているでしょう。ましてや私などが「2025年の為替相場にサプライズはあるか?」などと大上段に構えたタイトルをつけるのは恥ずかしい限りですが、思うところがありますので少々お付き合いをお願いします。

石破首相と植田日時銀総裁 首相官邸HPより

まず、為替相場の予想については例えば「円ドルは年末に〇円になる」といった類の予想をメディアが新年の特集でよく打っています。あれは私はほとんど無意味だと思うのです。ずばり為替がいくらになるかなんて特定の株式の株価が一年後にいくらになっているかを当てるようなものでそんなことは今後一年間にある様々な影響力でどちらにでも転ぶのです。それを無視して「現在の状況が続くなら」という前提をつけるわけですが、そんな条件を付けた時点で予想は無意味ということになります。よって我々はそれらの報道は「新春お笑い大予想」ぐらいの感覚で読み流してよいし、私はほとんど見ることもないのです。

ではお前は為替相場をどう判断するのか、と聞かれたら起こるべくエレメントを並べてその強弱感で予想するしかないと思います。ざっくり言えば今より円高になるか、円安になるか程度の予想すらできるかどうかというところだと思います。

為替はシーソーだということを私は長年の経験値である程度理解しています。つまり、基本的には一定のレンジの中で動きます。一定のレンジとは大雑把には二国間のパリティな為替ベース(購買力平価説)の上に双方の通貨発行量が基準となり、更に金利差を反映する金利平価説を組み合わせたエレメントが教科書的な発想でしょうか。

一定の成熟度を持った国家の経済は安定期にあれば潮の満ち引きのように繁栄と衰退が起きることも多く、国内経済状況に見合った金融政策を施すことで二国間の為替は動きます。

ただ、世の中、そんな簡単なものでもありません。かつてソロス氏が英国ポンドを打ち負かしたという武勇伝があります。一民間ファンドが一国の通貨を打ち負かすということすら起こりえるのです。あるいは日本にはミセスワタナベという個人FX投資家で逆張りを好む大きな流れがあります。最近はミセスワタナベが「シニアワタナベ」になり取引量が落ちているともされますが、不特定の民意が為替を動かすことも当然あるのです。

これはFX(先物)という様々な創造力が相場をある程度動かすと言ってもよいでしょう。専門家によっては為替が国力で動くわけがないと言います。しかし国力とは政治的圧力や将来的な経済力を当然含むわけでそれを市場参加者が分析し判断することでレンジを飛び越えて動くことも起こりうるわけです。例えば昨日の韓国の騒動では韓国ウォンが一時急落、円が買われましたが騒動が収まってそちらも一気に元に戻りつつあります。これなどは国情をよく表した動きでした。

ただし、ボラティリティの考え方からすると必ずいつかはレンジ内に収まるわけで為替の場合は株価のような短期ボラティリティ、中期ボラティリティそして極めて長いボラの組み合わせで動くのでシーソーだとも言えます。シーソーは下がっても地面についたらそれ以上下がらないのと同様、ファンダメンタルズが変わらない限りにおいて為替は循環すると考えています。

ドル円の場合、最近では1985年のプラザ合意がファンダメンタルズが変わった最後のイベントだと考えています。それ以降、ドル円の相場は80円から160円のレンジに収まってます。私が考える大枠レンジとはこのことです。そしてつい最近までそのレンジの上限(円安)に張り付いていたのです。私のシーソー的発想からすれば「ここから想定通り、円高にむかうのか」というのが大きな仮説になります。

円高要因としては日銀が12月ないし1月に再利上げする公算が高いという点です。但し、私はこれは既に市場が織り込みつつありむしろ日銀のその先のベクトルが何処にあるか次第だとみています。私は以前から日本の金利水準は1%程度が妥当と申し上げており、日銀や専門家も理想としてはそこをターゲットにしたいとしています。よって日銀がどれだけのモメンタムと意思をもって利上げを継続するかが円高を下支えする要因になります。

日本の物価高は世界基準に比べて低すぎる賃金水準の見直し期にあることと輸入物価の上昇、及び人材不足が主因ですからこれらが目先にすぐ好転するとは思っていません。

次いでアメリカのFOBがどこまで利下げをするかです。これは読みにくいです。トランプ氏が当選しなければあと2%程度は利下げが期待出来たのですが、トランプ関税によるインフレが果たして起きるのかが読みどころになります。個人的には関税引き上げを実施した場合、スタグフレーションになり、むしろアメリカ経済が弱くなり、ドル安を引き起こす公算があり、インフレ率とFRBの金融政策とは別の要因が為替を動かす可能性を考えています。またトランプ氏はドルは強すぎると言っているのでインフレ⇒利上げ⇒ドル高は望まないはずです。ここは金融政策を含めたもっとも読みにくい点でしょう。

経済力という点からは日本の経済力は強いのか弱いのか、ここがはっきりしないのです。日本経済は内需中心、また25年は半導体シフトが大きく進む年になりますが、半導体産業が来年も好況なのかは判断が分かれるところです。また日本経済を半導体だけで引っ張ることもできないし、それはあまりにもリスク過大なのです。ではほかの産業はどうかといえば仮に日銀が利上げを継続すれば消費は頭を抑えられるので海外事業で稼ぐしかない、けれどそれが可能かどうか私には判断がつきません。

この辺りを踏まえて2025年の為替を考えるしかないと思います。サプライズがあるとすればやはりトランプ政策によるアメリカの金融政策への影響、及び世界経済への波及でしょうか?個人的にはトランプ2.0は1.0の時のような波乱要因にはならず、案外普通の大統領に収まる気がしています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月5日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。