「正直、迷惑」男性保育士の知られざる苦労

黒坂岳央です。

筆者は今の時点で二人子供がいるのだが、下の子が保育園に通っている(近所に幼稚園がない)。今年から男性保育士が入ってきて担任になり、先日初めて面談をしていろんな話をしてきた。

印象に残ったのは「偏見」についての話だ。

key05/iStock

男性保育士への風当たりの強さ

保育についての話をした後、最後にちょっとした雑談になった際、「男性保育士が性犯罪で逮捕される事件が報道されるたび、保護者さんからの風当たりが強くなってしまう。報道を聞くたび、”一体、なんてことをするんだ!”と被害にあった子の心情が気の毒であることに加え、さらに自分への風当たりが強くなる状況に強い憤りを感じる」という話だった。

この場を借りて正直に言うと、自分自身も最初は自分の子を預けるのに抵抗がなかったといえば嘘になる。人事が発表された時に「え?今年は男の先生?」と驚いてしまい、次の瞬間「大丈夫かな?」という若干の不安を抱いた。上の子を預けた別の園では女性だけだったので安心感があった。調べてみると男性保育士は全体の5%。その5%が極稀に起こす事件がビビッドに報道されることでどうしても偏見を与えてしまうのだ。

だが、時を経て「この人は信用できる」という思いに変わった。子供の立場で暖かく見守ってくれ、「担任になってくれて良かった」という感謝の気持ちで溢れている。彼は昔から子供好きで信念を持って保育士の道を選んだといい、毎日送り迎えで接する中でその言葉に一切のウソがないような接し方をしていると感じられる。

それだけに今回、彼の本音を聞いた時に心底気の毒に感じた。心無い保護者から、傷つくような言葉を言われた過去があるのだろう。

一部の問題者がレッテルを作る

過去記事でも言及したことがあるが、「中年男性」という属性にはネガティブなレッテルが貼られている。自分は被害者ヅラをするつもりはなく、生物学的に、これまでの歴史的にも仕方がないと受け入れている。

自分も若い頃、中年男性と聞いて連想するイメージは「暴力的、性犯罪、不機嫌」といったネガティブなワードを思い浮かべてしまっていたし、職場でそういう人と数多く接した経験から「やっぱりそうだ」という感覚を持っていた。

初対面の相手から筆者を見れば、しっかりとこのネガティブなレッテルが貼られている。自分にできることは努力してなるべく、上機嫌で過ごし争いを避け、誰かとコミュニケーションを取る時は平和的で対話を目指すスタンスで接することだ。時間の経過でレッテルが剥がれ落ちる時が来ることを信じて。自分一人で歩いているときと、子供連れで歩いているときとでは周囲が筆者に感じる印象は全く異なるものになるだろう。レッテルとはそれほどまでに強力である。

男性保育士に貼られたレッテルの強さはこんなものではないはずだ。彼らの気苦労を想像すると、気の毒に感じる。責任感を持ち、真剣に子供の発達に向き合って努力をする人はいるのだ。

SNSで事件の大小にかかわらず、瞬時に地球の裏側まで共有され色んな意見が飛び交うようになった現代、偏見を持たないことの難しさを痛感させられた。自分も当初、少なからず偏見を抱いてしまったことに猛省しつつ、今後はできるだけ偏見を排除する努力をしたいと感じる出来事であった。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。