これでは上達しない小学生の英語

岡本 裕明

学習指導要領が改定になり、小学校5年生から英語を正式科目にし、英語をより年少な時から親しませる取り組みとなるようです。今では幼稚園の一部でも英語に取り組むところがありますし、小学校の低学年でも時折外国人の先生が来て教えてくれる学校もあります。また、子供向け駅前留学も盛んですが、なぜ、今、英語教育がそこまで注目されているのでしょうか?

一つにはグローバル化があるでしょう。訪日外国人が増え続け、外国人と接することが日常的になってきており、国際化が進むニッポンとして対応していくこともあるでしょう。海外に出る日本人ビジネスマン。英語は本当に下手くそです。英語以前に論理思考と表現力がないため、喋り方の基本がなっていません。そんな現実を受けて政府も躍起なのでしょう。少なくとも学校側は英語を子供たちに教えるために悪戦苦闘している様子が手に取るようにわかります。

正直申し上げますが、学習指導要領の変更の効果はほとんどないと断言します。小学校5-6年で年70時間程度の英語教育ということは学校がある時期(春夏冬休みを除く期間)に週2コマの指導ということになります。それで英語が喋れるようになれば日本人は天才であります。

私は実は日本で学習塾事業を支援してほしいと依頼を受けており、その調査、研究をしているところです。先日、その塾で受験を控える中学生3年生の数学を後ろから眺めていたのですが、何十年ぶりに見る受験問題、しかも図形の面積問題で遠い記憶の奥底から細い糸を辿るようにして「こうだったな」「あぁそうそう」と思い出したりしながらもまだ中学生なら大丈夫だという気になりました。

数学だからこそ思い出せたのは考え方で記憶しているからで例えば記憶主体の化学記号などはもう無理でしょう。実を言うと日本史も小中高と勉強しているにもかかわらず細かい記憶が定かではありませんでした。しかし、大人になり歴史の書に接したこと、テレビの歴史もので画像を通じて理解したこと、日本の観光地(城や銅像、記念館など)で体験することなどしてストーリーとして自分の日本史を体系化して今日、生かしています。

では英語。これは一つの方法として使わないとやり取りできないというギリギリの状態に置くことで記憶の埋め込みがしっかりします。例えば私はある時、ブラジルのサンパウロで一人でちょっとした仕事をしなくてはいけなくなったのですが、ブラジル語(ポルトガル語の変形)は全くできなかったのにどうにか付け焼刃の勉強をしてやり取りできたのはやらざるを得ない状態にしたからであります。但し、連続性、反復性がないため、今ではすっかり忘れてしまっています。ドイツ語もロシア語も勉強し現地では役に立ちましたが今では使わないため、忘却曲線を絵に描いたような状態であります。

子供たちが英語を伸ばすベストの方法はゲームなどを通じてSNSで英語でやり取りさせたら早いでしょう。小学生なら半年程度で英語のやり取りがスラスラになるはずです。なぜならゲームを通じて世界の対戦相手とどうしてもやり取りしないといけない状況になるからです。

日本の若年層向け英語教育は教科書にでてくる動物、果物などを英語で言う、という内容からスタートします。しかし、これが週たった2コマで30-40人の子供たちに教えるのが不可能なのはそれこそ小学生でもわかります。無駄とは言いません。が、せっかく、世の中ITを通じてつながるようになったのですからこれをうまく利用しない手はないと思うのです。どれだけ英語がネイティブで優秀な外国人の先生を連れてきても一人の生徒との接触は一コマで1回あるかないか。しかも英語塾に通っているようなちょっとできる子供が先生を独占しがちになり、出来ない子はよりできない差別化を増長する結果とならないでしょうか?(私の時代には少なくともありました。)

最近、日本の高校が修学旅行や夏休み期間の希望者だけのホームステイプログラムなどを取り入れています。日本の学校側からは厳しい監視体制で安全、安全、また安全で集団行動が主体となっています。せっかく外国に来たのにクラスメートとくっついて英語なんて喋ることはありません。もったいないと思いますが、学校側は子供たちに何かあったら大変、という気持ちが先行しています。

バンクーバーの若い日本人で英語がめきめき上達する人は非日本人とルームシェアしている方に多い気がします。否が応でも英語を話すからでしょう。大学留学もそう。英語でレポートを提出し、ディベートをします。大変でしょう。そんな苦しい時を乗り越えないとほかの言語は身につきません。

小学生に本当に英語を教育したいのなら通常の授業を英語ですること。これが一番です。先生が足りないのならIT化を進めたらよいでしょう。あるいは、学校にカリキュラムの自由度を持たせて例えば時差の問題がないオーストラリアやフィリピンの学校とスカイプ授業するとか、一コマ40分から45分のコマを15分とか20分の短いものを毎日繰り返すなど抜本的に発想を変えた方がはるかに効果は上がると思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 8月2日付より

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。