大統領就任直前となり、いよいよトランプ節がうるさくなってきた今日この頃ですが、私は正直言っておかしいと思っています。暴力的発言をして揺さぶりをかけるというやり方が世界で最も影響力ある国家の指導者がやるべきことなのか、と。つまり品格ゼロ評価であります。
トランプ1.0の時も同様の揺さぶりはしてきたので氏の常套手段だと思います。が、もしもトランプ氏がこの常套手段が面白くて更に種をまき散らしているのだとすれば2つの見方ができてしまいます。1つはそれ以外に手腕がないのだろうか、という点、もう1つはそのやり方は古臭く効果も薄いということにいつ気がつくのだろうと。
私は就任前で申し訳ないですが、トランプ氏の賞味期限は割と短いのではないか、とみています。つまり様々な豪語、公約、放言に対して実行能力が割と伴わないのではないかと思っているのです。
ウクライナ問題を24時間で解決すると言っていたのを1月7日の記者会見で6か月以内に変更しました。報道が正しいとすればさほど遠くないうちにトランプ/プーチン会談が実現する可能性はありそうです。ただ、プーチン氏には時間的な焦りがないのでトランプ氏との会談が設定されてもそこで和平を推し進める話がそう簡単に展開するとは思えないのです。
自らのノーベル平和賞受賞理由をウクライナ和平から中東和平の功績に切り替えたとされるガザ地区の停戦はどうでしょうか?こちらも現状暗礁に乗り上げています。私から見るとブリンケン氏が通い詰めて作った和平交渉ベースが今回ご破算になってマルコ ルビオ氏がまた作り直すのですからこれもたやすい話ではありません。
さまざまな脅し文句、例えばカナダをアメリカの州にする、グリーンランドが欲しい、パナマ運河を返せ、メキシコ湾をアメリカ湾に名称変更する、唐突にそして従わなければ報復するという発言に対してメディアもトランプ氏に気を使ってバッシングしません。これが中国なら世界中が大騒ぎになっているでしょう。
私から見ればトランプ氏と習金平氏はどっこいどっこいなんです。保身するため、ポイントゲッター的な耳障りのよいネタをばら撒く点で似ているのです。違いがあるとすればトランプ氏はディールを引き出したいためであり必ずしも本心ではないこと、習近平氏はイデオロギーなので本心であること、この違いぐらいです。
困ったことにはアメリカの主要企業もトランプ氏を敵に回したら自社の存続に影響すると思ったのか、トランプ氏支持に回るところが次々と出ている点です。メタ社がファクトチェックを緩和する発表をしたのもその一環。ザッカーバーグ氏がトランプ氏との会食で飲まされた毒が廻って来たのでしょう。会食に招待されていないエヌビディアのジェンスン ファン氏は「会いに行って当選のお祝いを述べ、次期政権の成功のためにできることは何でもしたい気持ちだ」と持ち上げています。
世界各国の外交筋も悩ましいと思います。通常は二国間会議はしかるべきルートを通じて成果が期待できるだけの事務方の果実が実るときに行います。ところがトランプ氏が今日まで会った諸外国の首長は概ねトランプ氏が会いたい人です。イタリアのメローニ氏とフロリダで会食した際にはべた褒めしています。メローニ氏は極右とされガチガチの保守である点でウマが合ったのでしょう。トランプ氏はアルゼンチンのミレイ大統領のような個性豊かで保守志向の強い人材を積極的に受け入れています。
私の予想では石破氏は2月に見込まれる日米首脳会談は実施されても容易くない内容になるとみています。石破氏もどこまで強い意志を持って会談に臨みたいのか読みにくいのです。だいたい孫正義氏を接待して情報をもらったところからしてレベルが低いと思います。トップ交代後の日米首脳会合とは一般には両国間の関係維持強化を確認することと、そのためにできる新しいことを議論するのが一般外交の流れです。ところがトランプ氏はそんなことより日本とディールをしたいのです。当然それはタダではない、ここが恐ろしく怖いところで石破氏は腰が引けているのだろうと思います。
一方、トランプ氏が比較的発言を抑えているのが自国の経済政策です。どう振興させるのか、アメリカに夢を抱かせるにはどうしたらよいのか、そのシナリオはまだ見えてきません。金融政策についても特段目立った発言はないように見えます。このあたりは就任演説でカバーされるのでしょうか?
アメリカの何をどうGreatにしたいのか、ここを論理的かつ分かりやすく提示しないとトランプ氏の政権運営は1.0のときより苦戦することになるとみています。最悪、アメリカの地盤沈下ということもないとは言えないかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月14日の記事より転載させていただきました。