先月12月20日コルドバ証券取引所で、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、すばらしい演説を行いました。
「アルゼンチンは今どうなっているのか」
「ミレイ政権は何を目標としているのか」
「リバタリアンのホッペからの批判への反論」
など、その演説の一部を抜粋・要約して紹介しようと思います!
※経済政策の細かい部分については、今回の記事では紹介していません。
※演説の全文は以下です。
※今回の記事は、日本在住のアルゼンチン人の友人「ミレイ大統領事情」さん(アカウント名)のXの投稿が原案です。
「ミレイ大統領事情」さんのXでは、アルゼンチンの政策やその効果などリアルタイムで日本語で投稿されています。
大手メディアにはない、一国民からの指摘は非常に勉強になります。
彼のXのフォローをぜひオススメします。
また、彼は自由主義研究所が2025年2月に出版予定の翻訳本「ミレイと自由主義革命」の監修もお手伝いしていただいてます。
ミレイ政権の1年と今後の展望:コルドバ証券取引所でのミレイ大統領の演説
批判者たちは当初、1年間でGDPの1%も調整できないはずだと言ったが、
私たちは、財務省で5%、中央銀行で10%という史上最大の調整を行った。
過去123年間のアルゼンチンの歴史を見てみると、113年間は財政赤字で、財政赤字でなかった10年間はデフォルト(債務不履行)だった。
つまり、歴史上、財政収支が黒字になったことはなかったのだ。
演説でのミレイ大統領の発言抜粋(以下同じ)
私の考えでは、中央銀行が金利をコントロールするのは間違っている。
金利は、消費、貯蓄、投資を時間の経過とともに移動させることを可能にする、時間間調整のメカニズムである。
現実に金利が存在するのは時間が存在するという理由からであって、貨幣が存在するからではない。
金利のコントロールは理論的に異常な活動であって、1936年に発表された災難から生じた。
それは ジョン・メイナード・ケインズという経済学史上最も極悪非道な人物の1936年に出版された本『雇用・利子および貨幣の一般理論』である。
ケインズは、救世主的で、堕落した泥棒のような政治家たちの賛同を得て、「物事がうまくいけば政治家のおかげであり、うまくいかなければ政治家以外のすべてのものの責任である」という著作を書いた。
私たちの観点では、インフレとは一般的な物価上昇のことではなく、インフレとは貨幣の購買力が喪失することだ
1. インフレについて
卸売物価上昇率(卸値のインフレ)は小売物価上昇率(一般のインフレ率)に先行するものだと考えており、そのため、卸売物価上昇率に焦点を当てる必要があった。
今日、卸売インフレ率に関する最新のデータは1.4%で、これは年間インフレ率18%に相当する。 以前の年間インフレ率は17,000%だったから、それが18%になったということだ。
ドル建てでは、デフレが起きている。
卸売はここ2ヶ月間、ドル建てで月1%のデフレに相当する。 これは年率ではドル建てで13%のデフレである。
これは月2%のペソ安政策(Crawling peg)の影響で、まだ物価は微妙な状態だが、最近のデータを見ると、一般の物のインフレ率は1.6%、食料品は0.9%、 サービス(公共料金等)は4.4%。
2. 実質賃金の上昇と、貧困からの脱却
直近の失業率は6.9%で、14万5千の新規雇用が創出された。
実質賃金はここ6、7ヶ月、インフレ率を着実に上回っている。ドル建ての平均賃金は300ドルから1,100ドルになり、不可能と思われたことが達成された。
貧困率は20%以上から8%から9%へと下がった。つまり、ここ数カ月で800万人のアルゼンチン人を貧困から救い出したのだ。
貧困状態に陥っていた人々は、左翼組織によって奴隷状態されていたがそれを全てなくした。
以前は、国が貧困層へ支援するのは、仲介者(左翼組織)を通してだった。 左翼組織は国からの支援金をピンハネし、全額ではなく一部しか対象者へ渡さなかった。
さらに、社会補助対象者は、左翼組織によって無理やりデモに参加させられたり、道の封鎖をさせられたりした。人身売買の事件もあった。
つまり、貧困層は「政治的に動かなければお金も食料品ももらえなかった」。このようなケースは全国にあり日常茶飯事だった。
そのため、以前のままでは、アルゼンチンでの貧困率は増える一方だった。
ポピュリズムは貧乏人が大好きだ。それは、貧乏ビジネスで大儲けできるからだ。左翼は、貧困層を増やしていただけだ。
彼らによって急増した貧困層に落とされてきた人たちを、一時的にしっかりとサポートをすることは必要。経済の回復の中で、貧困層から脱却してもらいたい。
私たちはインフレを下げただけでなく、失業率も下げている。貧困率も下げている。経済活動も去年より良くなっている。
政治カーストがずっと不可能だと言い続けていた事を、私たちはうまくこなしている。だから信じてほしい、今の道を続ければ、今年の成功は氷山の一角となる。
3. 中央銀行の閉鎖について
※リバタリアンのハンス・ヘルマン・ホッペは、
「中央銀行を最初から閉鎖していれば一番簡単で全てが解決できていたのに、ミレイはそれをしていない」
と、ミレイを批判している。
これに対して、ミレイは「アルゼンチンの現実の正しい情報をきちんと把握していない」として以下のように反論。
有利子負債とマネタリーベースは中央銀行にとって負債になる。
中央銀行を閉鎖すれば、負債を0にしなければならないが、その為には以下の2つの道しかない。
A.国債による吸収(負債を国庫に移動)(”ひとつは、債務を償還するか、金融負債を償還してゼロにする方法。”)
B.ハイパーインフレを起こす
インフレが無限に上昇すれば、負債はほぼ0に等しくなる
もし、ハイパーインフレになれば、それこそキルチネル派が狙っていた事が起きる。つまり、ストライキがおき、労働組合や左翼メディアが騒ぎ、当然、国民からの政権支持は失落する。
だから、中央銀行の貸借対照表の健全化、フローとストックの健全が、最初に必要なのだ。
それをせずに無責任に中央銀行を閉鎖すれば、敵(左翼たち)が狙っていた「バカリバタリアン」になり、政権と自由主義思想は、どちらも完全に潰されるだろう。
私は以前から、中央銀行の閉鎖には少なくとも4年かかると言っている。まだこの政権は、1年しか経っていない。
中央銀行のバランスシートの健全化も順調だ。
通貨の自由競争も現在実行中で、経済に好影響を与えている。
(※注:支払方法等の関連ニュースが毎日出ています。)
市場の自然な動きで、ペソよりドルが市場で使われるようになるだろう。
そうなれば国定通貨を保ち続ける意味がなくなる。
そして、「税金がドルで払えるようになる」と発表されれば、中央銀行は過去のものとなるだろう。
ドル化と言われるが、「通貨の自由競争」だ。
ドルよりもっといい通貨があれば、 国民がその通貨を使い始めたら、その通貨がメインになるシステムだ。
一旦、今後の投資によってたくさんのドルは入るが、そのドルを国内で回る刺激を与え、自然にドルが経済と一緒に回るようにすることが一つの目標だ。
4. 減税について
減税は、2025年も続く。
黒字を出し続けながら、納税者の税金を軽減していく予定だ。
一時的に大きな税収があった場合は国が積み立てるが、その税収が継続的になれば、減税をする。黒字無しの減税は不可能だ。
国民が支払う税金をなるべく減らしたいので、国予算の提出の仕方を変更したい。従来の固定された予算額ではなく、別の形でダイナミック的に動く予算を目指している。国家が小さく効率がよくなれば、公費が減少し減税が可能になる。
私たちはこの成長とともに、ますます「小さな国家」を目指している。
私たちは、国庫を賄うための税金であるシニョレッジを根絶した。
今後は、税の種類を6つだけにする予定であり、現在その法案の詳細を調整中である。
5. 自由主義について
私たちは自由主義の立場から、中央銀行は害にしかならない機関だと考え、通貨競争システムを信じている。
それに、私はリバタリアンの中でも無政府資本主義者なので、「国家は税金という強制的な収入源で生活している犯罪組織」「国家は国民にとって暴力的な組織だ」という考えを持ち、「国家は小さければ小さいほど、国民の自由が拡大し、全員がより良くなる」と信じている。
しかし、この考えの実現には、この世界の現実という限界があるので、それは不可能なことだとよくわかっている。
それでも、国は民間に介入せず、邪魔をせず、民間は自由に競争しなければならない、と信じている。
6. アルゼンチンは、自由主義によって未来は明るい
現在RIGI(大型投資奨励制度)で、120億ドル程の投資申請が届いている。
直近のイタリア訪問で、30億ドルの投資計画も得た。
アメリカと自由貿易協定を目指していて、(アメリカ側からも同時に発表された)これは実現する可能性が高い。
国会議員には、自由前進の議員は上院に15%、下院に10%しかいない。それにもかかわらず、アルゼンチン史上最大の改革を実行できている。
法案に賛成してくれた他の議員たちに、大きく感謝の気持ちを伝えたい。
ありがとうございました。
そして、2025年はとんでもなく素晴らしい一年になるので、楽しみにしていてください。自由万歳!
編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2025年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。