世界通貨に対してドル高が顕著であります。ドル指数というのがあり、いくつかの会社が独自の指数を提供しています。それぞれ若干違うものの傾向などはほとんど変わらないのでどの指数を見ても概観を知るには困りません。
たとえばブルームバーグのドル指数を見ると直近では大統領選挙前の9月27日頃にドル指数は概ね100.0にタッチし、短期的な安値をつけ、その頃からドルの騰勢が始まります。現時点のドル指数は109.37です。1割上昇したことになります。
思いつく理由は2つで1つはトランプ政権が誕生すること、もう1つはアメリカだけに好景気が偏っていることでしょうか?何がアメリカ人をここまで好景気にさせたのでしょうか?個人的には上昇し続ける不動産価格と株価で緩やかで継続的なミニバブルがずっと続いている、そんな風に見えるのです。
例えば不動産価格を考えてみましょう。北米は日本と違い、住宅は一定期間ごとに買い替え、ライフスタイルに合わせて違う形にしていくのが一般的です。家族構成の変化、就業状況の変化などが買い替えの理由です。そしてアメリカの場合、住宅取引は9割近くが中古住宅ですので不動産取引価格は中古の住宅価格である点が日本の新築住宅価格と相違する点です。
ある家族が1億円で2020年1月に中古住宅を購入したとしましょう。約5年後の24年末はいくらか、といえば全国平均の不動産指数でみると1億5300万円程度になります。これは連邦住宅局が出している指数なので全米でみるとこれより上がっているところもあるし、これほど上がっていないところもあるでしょう。しかし、約5年で5割上昇する、しかもその指数は緩やかな上昇、これがポイントなのです。
不動産全部が上がっているなら買い替える時に買い替え物件も高いだろう、というご意見があると思います。それは日本基準で見るからわかりにくくなると思います。家族構成の変化が主たる買い替えのモチベーションですから買い替える物件は今までの物件とはまるで違う尺度で考えるのでA⇒A’ではなくA⇒BとかCになるのです。すると値上がり益を何らかの形で享受しやすくなる、これが私が見るアメリカ好景気維持の背景の一つではないかと思うのです。
株価にしても同様です。ダウは2020年1月に29000㌦でした。今は下がったとはいえ43500㌦で上昇率は50%です。家計の株式や投資信託、債券への組み入れ率は5割超となっています。日本は現金、定期預金が5割超ですので好対照です。いわゆるアメリカの確定拠出年金でも株式組み入れ率は高いので私から見るとアメリカ人の家計資産はフローではなく、アセットとして膨れ上がりやすい傾向にある、故に根強い消費余力があるとではないか、とみています。
ではこれが今後も続くのでしょうか?読みにくいですが、私は仮に一時的なクラック(暴落)が起きても1-2年で回復できる力を備えていると思います。よってアメリカの富は今後も膨らむ公算は高いとみています。
冒頭のドル指数も今後も更に上昇を続ける可能性はあります。ただ、世の中、永遠というのはなかなか想像しがたく、どこかで大きな変化がないとは言えません。その変化は概ね政府がきっかけを作ります。例えば最近一部で囁かれているブラックスワン(まさかと思われる事態)が取り沙汰されています。それが第2プラザ合意のような世界経済のルールをすっかり変えるような事態ともささやかれています。たぶん、そのうわさの背景はトランプ氏の性格と氏が主張する強すぎるドルの是正、高すぎる金利の是正が根拠だろうと思います。ただ、今の世界経済はプラザ合意をした時代とは全く違います。あのような激変措置をすれば想定外の事態が起こり過ぎて修復不能になる公算もあるでしょう。個人的にはブラックスワンはお化けである、(つまり出ない)と思っています。
ドル高は是正されるか、というタイトルに対して私は今のところ、すぐに是正されるきっかけが見いだせないと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月20日の記事より転載させていただきました。