日本初の母子漫才師「ワタルwithオカン」のお笑い講演家・ワタルちゃんの講演は、聞いているだけで「生きていく元気」と「揺るぎない自己肯定感」が湧いてきます。
『自分が「大好き!」になるオカンの教え』(ワタルちゃん著)秀和システム
[本書の評価]★★★★(80点)
【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
悪口モンスターに要注意
著者は、いつか自然に、誰かに「大好き」と言えるようになったとき、たくさんいいことが起きると言います。同期と一緒にご飯を食べに行くようになった時のことです。
「食事の席では、同期たちが将来の夢を語ったり、すべらない話を披露したりすることもありましたが、僕はそんな彼らの話を冷たい目で見ていました。内心では『お前なんか売れるわけないやろ!』とか『すべりまくりやん!おもんない!』と思っていて、にらみつけるように同期の話を聞いていたのです」(著者)
「どうしても、同期の芸人たちの話を純粋に楽しむことができず、常に批判的な目で見てしまいます。もちろん、表面上は黙って聞いていたつもりでした。しかし、あまりにも心から思っていたため『おもんない、おもんない』という言葉が、いつの間にか口からもれていたらしく、オカンに軽く腕を叩かれました」(同)
食事の帰り道、オカンに次のように言われました。
「あんた、悪口モンスターに悪口を言わされてるやん」
「悪口を言いそうになったら、代わりに『ありがとう!』って言いなさい。そうすることで、運が戻ってくるんやで!」
「翌日、同期と会ったときも、やはり僕の心には『おもんない』という悪口が浮かんできました。しかし、次の瞬間、オカンの言葉を思い出し、『ありがとう』と心の中でつぶやいてみたのです。すると、不思議なことに、それまで心に感じていた重たいモヤモヤが、少しずつ消えていくのがわかりました」(著者)
「悪口を言いたい気持ちも徐々に薄れていき、なんとなく気分が軽くなっていったのです。『ほんまに効くんか?』と驚きつつも、その後も試してみました。しかしその後も、悪口が頭をよぎるたびに『ありがとう』と心の中でつぶやくと、まるで悪口モンスターが小さくなっていくかのような感覚が広がったのです」(同)
「悪口」の表裏を理解する
人の悪口を言わない人は存在しません。「悪口」という行為に対して「それは心が醜いから」「それはいけない事だから」と説いても矛盾が残ってしまうでしょう。
矛盾ならず、人の悪口を言うことは誰にでもあることですから、心のありかたを説いても意味がないのです。悪口は、誰だって言いたくなるんだけど、できるだけ言わないように気をつけていると解釈したほうが理解はされやすくなります。
では、「悪口を言う人」とはどんな人でしょうか? 多くの人は「自分勝手な人」「コミュニケーション力が低い人」といった答えがかえってくると思います。ただしこれは正解ではありません。悪口の影響を理解しなければいけないからです。
悪口を言ったために人間関係が壊れてしまうことはよくあることです。そして、いったん壊れた人間関係は、なかなか元には戻りません。悪口の「言った」「言われた」は表裏の関係にあります。だから、口にしないことで自らを助けるのだと理解しなければいけません。汚れた心は自らに降りかかるのです。これは仏教の説法でも解かれています。
なお、本書のケースにリアリティがあることから多くの人におススメできます。上司のコネタとしても役立ちそうです。物事の正しい道筋を見つけられるかも知れません。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)