成功者という言葉は巷にあふれています。書店にいけば成功者になるための秘訣的な本はすぐに見つかるし、他人を指して「あの人は人生の成功者よねー」という会話も時折耳にします。この成功者の定義、これが案外安っぽい理由、例えば金持ちになった、大会社の社長になった…で判断されている気もします。
人が人を判断するとき、「あいつは社内でもずっと冴えなかったのだから奴のいうことは大したことはない」「あの方はアメリカの〇〇大学院卒でそのあと〇〇会社から〇〇会社に移ったぐらいだから信用できる」といった表面的判断は往々にあるものです。
日本の会社や経営者の「能力判断」は売上高と従業員数が主たる要素である場合が割と多いと思います。会社の外形(みかけ)がデカい方が会社経営者として偉いというわけです。私はそんなアホウな判断はないと思っています。良い会社かどうかを見分けるのはきちんとした利益があること、従業員が前向きに業務に取り組み、その業務効率が高いことが私の価値観です。仮に売り上げが10億円あっても利益が1千万円しかないのと売り上げが1億円しかなくても利益が1千万円とどちらが良いでしょうか?あるいは従業員が500人いても退職率が高く、社内に陰湿な空気が漂っていても良いのか、50人しかいなくてもきびきび活発な方がいいのか、と言われれば判断は変わってくるでしょう。
私は人生はフルマラソンが非常にわかりやすい例えだと思っています。仮に大卒で22歳で就職したら42.195㌔ではなく42.195年働くとして64歳ちょっと。リタイアしようかなぁ、と思うのは65歳程度が多い中でピッタリくるわけです。皆さんの年齢をフルマラソンに当てはめてみれば自分がどのあたりを走っているかわかりやすいと思います。
人生の成功者はまずこのマラソンを走り切ることかな、と思っています。走り方は自由です。別に転職しても途中で休憩しても最後まで走りぬくという意識を持てばOKだと思います。一生、課長止まりの方もいるでしょう。しかし、それはたまたま所属した組織においての評価であり、「俺は社長や役員になれなかったから不成功者だ」と思う必要は全くありません。肩書はその組織の中での人事規定以上の何物でもなく、その方が一歩会社の外に出れば課長ではないのです。
マラソンは走っている時はきついのですが、ゴールしてしばらくするといろいろなことを思い出すものです。あの時勇気づけられたとか、あの頃は苦しかったな、という具合に。でもやり遂げたことで前向きの思い出として残るわけで、故に成功者とも言えます。成功者に優劣はありません。
「お前は今、人生をどうエンジョイしているのか」と聞かれたら「好きなことを好きなようにできることが何より」と申し上げます。人生後半になっても欲はあるもので新しい事業でも「あれもやりたい」「これもやりたい」と思うのですが、時間がかかりすぎて自分の代で終結しなくなります。私の会社は小さく、個人事業主の域ですから外部からの借入金には頼らず手持ち資金で事業展開をすると心に決めています。すると必然的に会社の成長スピードは遅くなります。仮に今、手元に100億円あればかなり思い切ったビジネスができるし、そのノウハウもありますが私は昔から同じ事業を大きくする趣味がないので興味がないのです。
ちっちゃい会社だけど新しいことに取り組み、手持ちの事業ではしっかり稼ぐ、これでよいのだと思います。既存事業は顧客の皆さんからは感謝され、代金を喜んで払っていただける、これが私のビジネスモデルの最大の特徴です。顧客から笑顔で「ありがとう」と言われるビジネスほどうれしいものはないのです。
今年は新規計画に3つプランがあるのですが、うち2つは既に動いています。3つ目も春には準備を開始します。完全な新規事業もあるし、既存事業の枝葉(新規部門)を作るものもあります。
私の会社はおもちゃ箱のように見るかもしれませんが、すべてがバラバラのビジネスではないところがポイントです。40代の頃はなんでも手出ししたくなる年頃でしたが、それがうまくいかないことに気がつき、自分に明白なポリシーの枠組みをつくり事業展開しています。
人生の成功者はゴールした時、走り終えた自己満足と走り終えた自信からもう少しランニングしてみようかな、という前向きの気持ちが生まれるかどうかだと思います。会社勤めでゴールされた方には、嫌な上司とか思い出したくないトラブルもあると思います。しかし、ゴールしたのでそれは思い出の玉手箱であり、当時の上司は今ではただの人だと割り切りたいですね。そしてフルマラソンの反省を踏まえて今度はちょっとこんな風にランニングしてみようかな、と目標設定をしたらよろしいかと思います。2度目のフルマラソンは無理ですが、ハーフマラソン(85歳まで)ならいけるかもしれないし、10Kマラソン(74歳まで)でもよいでしょう。
森永卓郎氏の経済評論家としての評価は横に置いておくとしてお亡くなりになる前日までラジオにご出演されていたと聞いて人生を100%エンジョイされたのだなと感動しました。社会との接点を持ち続ける、これが人生で一番楽しいことなのだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月2日の記事より転載させていただきました。