トランプ大統領が「米ロ朝の3カ国会議」を模索か

トランプ米大統領は北朝鮮の最高指導者金正恩総書記を「賢明な指導者だ」と評価するなど、第一次政権時代と同様、金正恩総書記との首脳会談に依然関心があることを示唆しているが、欧州駐在の韓国外交筋が明らかにしたところによると、トランプ氏は米朝両国にロシアのプーチン大統領を加えた3国首脳会談の開催に意欲を有しているという。

「軍事同盟」を宣言したプーチン大統領と金正恩総書記(クレムリン公式サイトから、平壌で、2024年6月19日)

北朝鮮がロシアと昨年6月、安全保障・防衛分野などを網羅した「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結する一方、約12000人の兵士をロシア軍を支援するためにウクライナに派遣するなど、ロ朝両国が軍事同盟の関係を深めていることを踏まえ、トランプ氏はウクライナ戦争の停戦が実現すれば、朝鮮半島の非核化問題は米朝両国だけではなく、ロシアを加えた米ロ朝3カ国会議で進展が期待できると考えているという。ただし、金正恩総書記はトランプ氏との米朝首脳会談の開催を願っているといわれるだけに、3カ国会議が実現できるかは現時点では不透明だ。

一方、韓国政府は朝鮮半島問題の解決で韓国が会議から外されることを懸念、米朝ロに韓国を加えた4か国会議になるように米国側に要請していきたい考えという。ただし、尹錫悦大統領が弾劾され、「内乱罪の首謀」の容疑で起訴されるなど、韓国内の政情が不安定であることもあって、トランプ側は「韓国外し」が会議の進展で都合がいい、といった判断に傾きつつあると見られている。

ところで、北朝鮮がプーチン大統領の要請を受けて約1万2000人の兵士をロシアに派遣、北朝鮮兵士がウクライナ戦場で戦闘をしているが、ここにきて北朝鮮兵士が前線から後退したという情報が流れてきた。それに対し、先の韓国外交筋は「後退しているが、訓練を受けた後、再び前線に送られると予想している」と指摘。北朝鮮兵士がウクライナ軍との現代的な戦闘に不慣れで多くの犠牲が出ているといわれるが、「北朝鮮の兵士は優秀だ。しかし、ウクライナ軍との戦闘では戦場が平地のため、山や森林に囲まれた朝鮮半島の戦場とは明らかに異なっている。北朝鮮兵士は戦いで隠れる場所がないためウクライナ軍の射撃の対象となりやすいのだ」と解説。同時に、「ウクライナ戦争終焉後、実戦を積んだ北朝鮮兵士の戦力はアップされているだろう」と指摘し、警戒を示した。

ちなみに、韓国国家情報院によると、北朝鮮はクルスク州に約12000人の兵士を派遣し、そのうち少なくとも300人が死亡し、2700人が負傷したと見られている。

同外交筋は「戦場では多くの北朝鮮兵士が負傷し、捕虜になることを避けるために自害する兵士が少なくない」と述べ、多くの北朝鮮兵士が国の家族の安否を考えて自害する件数は多いと指摘。北朝鮮軍指導部はウクライナ戦争に派遣された兵士に「捕虜にならず、自害せよ」と教育しているという。

なお、2人の北朝鮮兵士が負傷し、ウクライナ側に捕虜となったが、その一人の兵士がウクライナに留まりたい意向を明らかにしたとの情報が流れている。それに対し、韓国外交筋は「大韓民国の憲法によれば、北朝鮮国民は本来、韓国の国民だ。だから、北朝鮮兵士たちは韓国に行く権利を有している。捕虜に関するジュネーブ第3条約を基本にし、彼らが強制的に北側に帰国させられないためにも、北朝鮮兵士の自発的な韓国送還を願っている」と述べている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。