ハマると人生が破滅する「3つのS」

黒坂岳央です。

偉大なる投資家・ウォーレン・バフェット氏は「ハマると破滅する3つのLがある。Liquor=酒、Loan=借金、Love=恋愛だ」といった。

これをなぞらえて、筆者は「ハマると人生が破滅する3つのS」があると思っている。独断と偏見で作成したものだが、現代人がハマりやすく、実際に破滅する人に当てはまると思っている。

それは「① 見栄(Show-off)、② SNS依存(Social Media Addiction)、③ 被害者意識(Self-victimization)」である。

piranka/iStock

見栄は人生最大のコスト

1つ目の見栄、または承認欲求である。

よく人生の3大コストは「教育・住宅・老後」といわれる。だが、見栄は第4のコストどころか、人生最大のコストになり得る。さらに、他の3大コストを押し上げる厄介な性質がある。お金の浪費だけでなく、精神的な負担も増大することに加えて、本来必要のない競争を生み出し、持続的なストレスを生みだすからだ。

爪の先に火を灯す勢いで節約して資金を捻出するような倹約家でも、見栄のためにムダなコストを払ってしまうことがある。また、高学歴・高キャリアで知能指数が高い人でも同様だ。これは、見栄を張る心理が知能指数とは別の要因で動くことを示している。

ほとんどの人にとって住居は最大の買い物だが、見栄を張るために本来必要がないブランドのマンションをブランドアドレスに購入して自慢したり、マウントを取るために知名度の高い学校へ子供を行かせたりする人もいる。また、本来は単なる移動手段に過ぎないのに、高級車を乗り回してムダなコストを払い続ける人などだ。これらのコストを有益な使い方をすれば人生は遥かに豊かに、楽しくなるはずだ。

見栄は人生をダメにする。なぜなら見栄には際限がなく、マウントを取った相手も見栄を張り返すために、永遠に終わらない札束で殴り合う戦いが待っている。たった一度しかない人生をそんな無益で非生産的なことに使ってしまうことに、筆者はまったく価値を見いだせないのだ。

破滅の入口はSNS

かつて、人生の破滅の入口はわかりやすい姿をしていた。酒、ギャンブル、借金、悪い人間関係であった。客観的に誰が見ても自分の人生のツキを下げる要素が視覚的にわかるので、こちらから積極的に近づかなければ害はなかった。

だが現代は違う。多くの人が人生を狂わせる起点になるのがSNSなのだ。わかりやすい事例として、学生が悪い大人に騙されたり、偏った意見ばかりをエコーチェンバー効果で聞き続けることで、もはや修復不可能なレベルに認知の歪みが起きたり、不安や憎悪をかきたてられつづけて、人生を豊かにする代わりに存在もしないはずの集団に立ち向かうためのムダな出費やコストを支払われてしまうことだ。

SNSは誰でも無料で入ることができる。だが、一度入るとそこから抜け出すことは容易ではない。あらゆるSNSは世界最高峰の頭脳の持ち主が、技術の粋を集めてハマらせるように作っている。そしてSNSに情報汚染されないよう自衛する思考力を持つ人は限定的であり、多くは少しずつそして着実に狂っていく。だが、その狂うスピードはあまりに遅効性であり、自分でその異常性に気づくことは容易ではない。

SNSのアルゴリズムは、利用者が興味を持ちそうな情報を優先的に表示する。その結果、似た意見ばかりが目に入り、異なる考えに触れる機会が減る(エコーチェンバー効果)。これにより、特定の思想に過度に傾倒し、現実との乖離が生じるのだ。

筆者のよく知る人間にも、SNSのフェイクニュースや陰謀論で狂ってしまい、かつて普通に楽しく会話ができていた人が不可能なレベルに狂っていくのを何名も見送ってきた。パンデミックや戦争、各国政府との外交問題などをまるでどこかのファンタジー世界の出来事のように捉えてしまい、まったく会話が通じなくなってしまった。彼らはもうこちらの世界には戻ってこないだろうし、とても生きづらくなるだろうと思う。

狂っていなければまったく違った人生を送っていた可能性を考えると、良くも悪くもSNSはとてつもない力を持っていると思う。有効に使えば若い時期から世界中の最高の情報に触れることもできるからだ。できれば後者でありたいものである。

リアルが充実していてすでに人生を幸福に生きている人、100%情報収集やビジネスのツールと割り切れない人は最初からSNSに近づくべきではないだろう。

被害者意識で一生子供のまま

最後に被害者意識、他責思考である。

その人がどう生きようとその人の自由なので、あれこれ講釈を垂れるつもりはないのだが、事実として他責思考は結果的に損につながりやすい。筆者の場合、独立を決意してからは特に徹底的に自責思考になったので余計にそう感じてしまう。

他責思考とは、つまりは人生で起きるあらゆるイベントの責任を外部に求めるという考え方のことだ。これの何が問題かと言うと、すべてが人のせいになるので「人生は自分では一切変えられない。すべては周囲の人間の動き次第」となり、自らの意思で生殺与奪を積極的に相手に預けに行く点である。

たとえば電車が遅延して打ち合わせに遅刻した場合は「電車が遅れたのが悪い。自分は悪くない」という思考で処理をする。その人の勤務先ではそれで通るかもしれない。いや、口では何もいわなくても内心の評価は分からない。

そして「自分は悪くない。悪いのは国、社会、周囲の人間」という感覚で生きるとプライベートの人間関係や、独立して自分で営業活動をする過程ではなかなか難しい。

冷静な相手は「確かに雨の日は遅れることって多いですよね」と笑ってスルーしてくれるかもしれないが、心の中ではすでに信用はゼロである。「雨の日に電車が遅れることを想定して行動できない計画性がない人間」という認識になることがほとんどだろう。

そして厄介なことに、20代の頃はまだ良くても、30代以降の社会人はいちいちそんなことは教えてもらえない。さらに他責思考にハマると、戦略的に自責思考を取り入れて自己成長をする過程で、リターンを総取りできるという合理的で自分が最も得をするというポジションを理解できない。短期的に目先の得、面倒さを忌避することにフルインベストメントするので、長期的な勝負に必ず負けてしまうことになる。

願わくばできるだけ人生の早い段階から、自責思考を叩き込んでもらうことで「自責思考は長期で得」ということを肌感覚で理解しておくことだろう。人にせいにするのは短期的に気持ちは楽だが、この信用経済下においては一生自己成長とチャンスを逃し続ける最も分が悪いポジションとなるのだ。

見栄、SNS依存、被害者意識。これらを手放すことで、無駄なコストを減らし、冷静な判断力を養い、自分の人生を主体的に生きることができる。ぜひ、早いうちに距離を取ることをおすすめしたい。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。