厚労省が人口動態統計を発表し、外国人を含む出生者数は72万人で日本人だけに限れば70万人を割るとみられています。少子化問題が話題になるたびに私が思うのは、東アジアに限って言えば若者が結婚に積極的でなくなったことが少子化の最大の理由だろうと思っています。
以前にも書きましたが、日本人は結婚さえすれば子供を一定数もうけるのです。これを完結出生児数と言い、その数、1.94。一方、報道で見かけるのは合計特殊出生率で日本全体では1.20とか東京都は0.99という数字です。これは未婚女性を含む出生率を表します。婚外子が2%しかない日本では結婚しないことが少子化の最大のネックであって少子化対策は婚姻数を増やせれば相当改善する可能性は計算上からは言えると思います。
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仮定の話ですが、世の中の若い女性が全員結婚すれば理論的には日本の合計特殊出生率は1.94に近づくわけで日本の人口減問題は相当先送りできるとも言えます。ちなみに人口維持に必要な合計特殊出生率は2.07。2.00を超えているのは男児の死亡率が女児に比べて高いからです。
ではなぜ結婚しないのでしょうか?これは東アジア全般に共通した問題ですので日本と中国、韓国、台湾を含めて考えて良いかと思います。
私が思う最大の理由は女性の社会進出。これが女性の婚姻に対する価値観を変えたとみています。日本政府は女性の社会進出を強く後押ししました。これは欧米に比べて女性の地位が不十分であったこともあります。また近年、短大の激減化に伴い四年制大学に進学する女性が増え、就職してもかつては一般職、総合職と分かれていたもののその区別が無くなってきたことは大きいでしょう。つまり女性は努力さえすれば男性とほぼ同等の地位を得られるのです。
ところで女性は概ね男性より数歳、精神年齢が高いとされています。一般的な夫婦は男性が年上のケースが多いと思いますが、これは自然とカップルになる際に精神年齢の差が反映されているとみています。これが最近の事例で見ると時折、極端に年齢差が大きい結婚がみられるのは女性の男性に対する精神年齢信頼度が下がっている可能性があるのではないでしょうか?つまり、女性が社会進出し、自分の力で稼ぎ、自立することを覚えたことで伴侶に求めるものが男性の稼ぎというより「おとな力」の有無なのではないかと推察しています。
「おとな力」とは私の思いついた言葉ですが、社会環境適応力、家族を維持するための能力、許容力、包容力、判断力などを含めた人間としての総合的な能力であります。
ですが、残念なことに男性はある意味、賢くないのです。男の精神年齢なんてちっとも成長しないし、物心ついた時から案外、変化が無かったりします。「女性は成長したが、男性は止まっている」このギャップこそが婚姻数激減の理由としたらどうでしょうか?
この10年の婚姻数の変化。ざっくりとした比較ですが、日本は3割、台湾4割、韓国と中国は5割減となっています。これら東アジア地域は基本的な文化や価値観は宗教縛りの観点からは似ており、経済発展と共に女性が社会進出を遂げその結果、婚姻数が減少するというほぼ同じ流れとなっています。
日経に中国の婚姻数の減少に関する記事があったのですが、その分析理由はカネの問題。特に男性が家を用意し、多額の結納金も負担になっているとあります。目先の理由としては分かるのですが、果たしてそれだけなのだろうか、というのが私の疑問です。というのはその傾向がもっと強かった韓国はこの10年で大きく変化し、女性が家を提供することも含め、結婚の金銭的不公平感は取り除かれつつあるのです。それでも韓国の婚姻数は減少傾向に歯止めがかからないのです。
日本の結婚費用の平均は400-500万円でうち、結婚式の費用が2/3ぐらい占めます。ただ、こう言っては何ですが、祝い金の戻りがあるし、両親がそれなりに出すケースもあるので金銭が結婚の妨げになっているとは思えないのです。
仮に男女の婚姻適合精神年齢の差が広がっているとします。すると、ある程度年上で未婚女性が頼れそうな男性となると売約済みが多く、女性が求める理想像に到達しないのが理由ではないかとみています。私の周りにも嘆くお父さん、お母さんが結構います。「うちの娘、30にもなって全くその気配がない」とか「生まれてからこの方、ボーイフレンドができたことがないかもしれない」といった声は聞きます。そしてそのようなお嬢様方は概して一流企業にお勤めなのであります。
結婚は面倒くさいのかもしれません。特に近年では一人っ子世代も多く、兄弟もおらず、ミーイズムの生活を過ごしてきただけに「結婚後の共同生活」への抵抗はあるでしょう。価値観の変化と言ってしまえばそれまでですが、この傾向に歯止めをかけるのは難しいかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月2日の記事より転載させていただきました。