現経営陣がそのまま経営すれば株価が改善する見込みはないセブン&アイ

私は弱小ながら事業を行う者であり、経営と実務の両方を実践しています。同様に個人ベースの投資も行っていて不動産絡みと株式投資があります。投資のスタイルは会社レベルと個人ベースでは若干変えています。会社は収益が長期的に期待できるという保守的思想とイノベーティブな行動による事業収益の確保が主眼です。特に会社の事業の場合、他社と比較し、他でできて自分たちにできない理由を考え、それを改善することがメインテーマになります。

個人投資はリスク度合いをいくつかに分けています。元本が安定している定期預金、株式投資でも配当を主眼に置くもの、そして同じ株式投資でもキャピタルゲインを狙うもの、この三つです。個人の場合はリスクを取る割合を高めに自分の中で設定してます。

さて私の会社の事業は、例えば収益構造が非常に安定しているのがマリーナ事業で、経営改善を毎年行っているため利益率は我々が直接運営するようになった2016年か20%ポイントほど向上しています。今年は更に上伸するはずで、来年は大きくジャンプする事情があるので立派な事業に成長したと思います。

一方、書籍販売事業は利益は出るのですが、伸びがない、これが最大の悩み。根本理由はわかっているのです。書籍の流通は構造的に利益を生み出せないのです。書店の問屋である取次から国内書店が卸した時点での利益マージンはせいぜい12-15%。つまり1000円の本なら850-880円程度の原価になります。これでよく食っているな、と思うでしょう。日本の書店が激減した根本理由の一つです。書籍出版販売事業の利益配分の構造的欠陥が存在するのです。そのため私たちは数が出る書籍は版元と直取引をして卸価格を大幅に引き下げています。

我々は更に工夫を重ねます。海外書籍販売のメリットとデメリットは実に明快。メリットは販売価格が定価ではないこと、つまり価格は我々の独断と偏見でいくらにでもできることです。デメリットは返本ができないこと。規定上も物理的な輸送を含めてもこれは不可能。このような特性の中で海外在住の日本人が書籍を手に取らない現実を考えると書籍販売業の海外展開は極めて特殊で私はインフラの一種だと思っています。

投資のだいご味と銘打ったのは好調な事業でも伸びを欠いている事業でも自分たちの手で改善を常日頃行える楽しさにあると思います。

では自分のレベルではできない大企業とどう歩調を合わせるか、これが株式投資の面白さだと思います。一例をあげましょう。バンクーバーに本社がある銅鉱山企業はパナマにある世界最大級の鉱山の採掘権を持っていたのですが、1年半近く前に同国の政権不安定から閉山させられ、株価は瞬く間に1/3以下に崩落しました。たまたまその時は同社の株を持っていなかったのですが、この事態をじっくり研究した上で、私がパナマ政府ならどうするか、私がこの鉱山会社の社長ならどうするか、考えたのです。その上で株価の底値を拾い、噂で株価の振れ幅が大きくなる中、同社の収益のボトムラインと期待値の振れ幅を利用した売買をしたのです。何度繰り返したか…。そしてパナマ政権がトランプ政権からいじめられた時、そろそろ大きな転換点だろうと判断して買い増ししたのです。案の定、政権は国内経済が苦しくなったため、銅鉱山会社に緩和策を提示したのです。株価の動きはおのずとお分かりになると思います。

こういう分析をしながら投資をするのが実は最も面白いのです。トヨタとか日立は完成された会社で株価は全体の地盤変動の中で動き、材料が出ても大きく動かないものです。今、私が日本株でもっとも面白い賭けだと思うのはセブンアイでしょう。現経営陣がそのまま経営すれば株価が改善する見込みは目先はありません。理由は社長が変われどもセブンの創業当時のコンセプトの殻を破れず、保守的な経営が続くと見えるからです。一方、カナダ社が買収に意欲を示す中で仮に買収が起きればセブンのみならず、ライバル会社にも大きな刺激となるはずで業界の底上げが期待できるのです。私はアナリストとか数字というところではなく、経営へのインパクトを主眼にみています。これが株価を最も大きく変動させる要因だからです。

アメリカのセブンイレブンの店舗 セブンイレブンHPより

投資のだいご味とは自分が経営者になったらどうするか、常に考え、あらゆるシナリオの中でどれを選ぶのが現実的で今の経営陣ならどう判断するのか見る、これが私のやり方です。もちろん、外すことは大いにあります。私のある投資先の株価は96%下落しました。丹念に企業分析をした結果、この会社は潰れない、再生できる余地はあると判断し、下落した時点でもともと持っていた株数の20倍購入しています。どうなるかはある意味賭けでもありますが、ハズレくじもあるけれど、時々大当たりすることで投資のバランスとリターンは相対的に健全になっています。多分、自分の事業と同じで工夫し続ける努力、あるいは時の風がどう吹くか予見するのが投資のだいご味だろうと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月19日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。