トランプはなぜ今、イラン攻撃を決断したのか

The White House より

トランプは21日(米国東部時間、以下同様)、イランの核施設3か所を爆撃したと発表した。3か所の核施設には、地下90mに各濃縮施設があるとされるフォルドウ施設も含まれる。21日午後、米メディア『The Hill』は、国防総省(DOD)当局者がB-2爆撃機を太平洋上に移動させていると報じたから、爆撃には地表から60mを貫通する「バンカーバスター:GBU-57」が使われたと思われる。

トランプは19日、イランを攻撃するかどうか2週間以内に決断するとしていたが、筆者には2つの理由で米国がイラン攻撃に踏み切るとの予感があった。1つはイランの最高指導者ハメネイ氏が18日早朝、「我々はいかなる攻撃に対しても決して降伏しない」とSNSに書き込んだこと、2つ目はイスラエルが19日、イランの弾道ミサイル発射施設の3分の2を破壊したと公表したことだ。

「血を見ること」、とりわけ米兵のそれを見たくないトランプは、目下、シリア・イラク・ヨルダン・クウェート・バーレーン・カタール・UAEの米軍基地に駐在している4万人以上の軍人と民間人、そして数十億ドル相当の軍事装備がイランの弾道ミサイルで報復されるのを恐れて、様子見していた。そこへ前記の公表があり、イランによるイスラエルのへミサイル攻撃もここ数日、激減していたことで、爆撃に踏み切ったのだと思う。

イランへの攻撃はMAGA支持者にも異論があった。それらにはタッカー・カールソン(マスクと同様、直後に言い過ぎたと謝罪した)、スティーブ・バノン、マージョリー・テイラー・グリーンら、トランプに極めて近い者もいる。また、肝煎りで国家情報局長官に据えたトゥルシー・ギャバードが、「イランが兵器開発に動いたという証拠はない」と述べていた。が、トランプは決断した。

トランプにとっては、今、イランの核開発の芽を摘む必要があったのだ。フォルドウやIAEAが19日に濃縮施設の存在を公表したイスファハンの様な地下深い施設を破壊できる兵器をイスラエルは保有していない。

その破壊には30000ポンド(13トン)の「GBU-57」を同じバンカー(壕)に複数回撃ち込む必要があり、それには7千kmの航続距離を持つB-2爆撃機を空中給油機と共に使うしか手立てがない。ここで米軍が出張らなければ、西側社会は抗戦を表明したハメネイ師が指導するイランの核開発を、今後も懸念し続けねばならないのである。

トランプは地上軍を出さない意向だという。それでも、既にハマスやフーシ派の力を削がれ、ヒズボラも動かず、何より多くの革命防衛隊幹部を失っているイランは、今般の爆撃で更に弱体化し、トランプの勧める和平を模索する可能性がある。

そうなると、目下、西側の制裁下にあるイランの石油の9割を、人民元で安価に輸入している中国には痛手だ。また中国がイランに25年間で4千億ドルを投資するとした、21年の一帯一路協定の今後も危うくなる。これらもトランプは視野に入れての決断であろう。