S&P 500は唐突な利下げ期待で新値

S&P 500は予想に反して棒上げとなった。週末こそ米軍のイラン核施設への空爆で盛り上がったものの、月曜6/23のNY時間に行われたイラン側の反撃が事前通告済の限定的なものであったため買い戻しが始まった

以前の記事でも中東のミサイル合戦では「先手側が攻撃し、後手側の反撃も行われ、それが弾着した時点で押し目買いを入れてもいいという経験則」を紹介したが、これの「イスラエル⇔イラン」の後に「米国⇔イラン」バージョンが続いただけだった。

原油価格も月曜6/23から暴落して元に戻ったため先週の記事が警戒したようなアンチ・ゴルディロックスにはならず、それどころか、Fed関係者の年内利下げを推す発言が相次いだことで、急速に早期利下げ期待が盛り上がるのに伴いS&P 500はそのまま過去最高値を更新した

上値追いの買い場としては原油価格の急落が確認できた時点、週足上ヒゲ陰線の上限を突破した時点が考えられたが、基本的に前回の記事は下値余地を分析することはあっても急騰を想定していなかった。これは手痛い失敗であり、株式投資とはまさに先週のような上昇のために行うものであるのだから、先週の上昇を逃すようなら最初からガチャガチャするなと思ってしまうレベルである。

一度は静かになったと思われたGSのシステマティック勢はじり高からの高値更新に触発されたのか再び買いに転じようとしている。

DBのポジショニングも裁量勢は先週までに中立まで買戻し、システマティック勢も短い停滞を経てから再び買い直している。

バークレイズはHFの非常に急速な買戻しを指摘しつつ、システマティック勢のポジション復元が道半ばとする。中東の戦争すらもじり高で乗り越えたことから、1ヶ月のリアライズドVolは10近辺まで低下してきたようである。

BofAのディーラーガンマ分布が新たに流れてきたが、18日付けなのでまだOp Ex前である。もしこれがそのまま残っていたら6200より上はショートカバー圧力がかかりやすくなるが、Op Exを通過してさすがに削れていると思われる。

企業の自社株買いはそろそろ完全にブラックアウトに入る。

にもかかわらず、シーズナリティではGSによると1950年以来で7月前半は全ての半月の中で最も強い時間帯である。

NAAIMは棒上げにもかかわらずやや悲観化した。一方GSセンチメント・インジケーターは一気に中立近辺まで戻って来た。NAAIMの逆張りだけすると中期的には売りでも短期的には確信犯で買えるが果たして。

インサイダーの売りはやや長引いている。先週までに行われた革ジャンによるNVDA持ち株売却が話題になった

S&P 500は2024年と同程度のフォワードPERまで反発した。機関投資家は年後半のリスク要因を並べているが、結局目先は上がる限り口嫌体正直に追い掛けている。

今週はまず月末の年金のリバランスをこなしてから雇用の週に入るが、雇用統計は少し悪い方が利下げ期待でリスクオンになりやすそうである。7/9に関税猶予期限が控えており、ベッセントのおかげで交渉が終わらない国はレイバーデーまで延長するのが当たり前と思われているが、直近になってトランプが交渉を延長せずに切り上げて書簡で関税率を通告するかもしれないとも言い出しており、上値追いして書簡を喰らったら非常にアホらしい。

テクニカル。週足上ヒゲ陰線のヒゲが破られたことで5943が週足サポートとなる。結局イランのヘッドラインは25SMAまでの調整を作った程度であった。1日2%以上の押しが来たら別だが、この区間では基本的に押したら押し目買い、くらいしかできることがない。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年6月30日の記事を転載させていただきました。