黒坂岳央です。
ビジネスの現場において、「わかったふり」がバレると一発で信用は地に落ちてしまう一方、「わかりません」とハッキリいえる人は意外にも信頼される。
特に会議の場では、わからないことをそのままにして持ち帰る人は大変多いが、不明点はその場で明確にし、解決するべきだ。
仕事においてわかったふりをするとどれほど信用を失うのか?

metamorworks/iStock
話し手と聞き手の責任
コミュニケーションというのは本来、話し手と聞き手の両方に責任がある。だが、どちらかといえばその比重は話し手の方が大きい。なぜなら言われるがままである聞き手と違って、話し手は平易な言葉選びやビジュアル豊富な資料を使うなど創意工夫ができるからだ。
また、「ここまででわからない点はありますか?」「違う意見の方は遠慮なく言ってください」と促すことで、参加者は「言っていいんだ」と言いやすい空気を作るのも話し手の責任である。そしていざ意見が出たり不明点の確認が入った時は「いい質問ですね」とウェルカムな雰囲気を出す。
米国では「That’s a very good question」というビジネスマンや教授がおり、質問を歓迎するムードを作りに慣れている人が多い。
そのため、まともなビジネスマンほど「相手に伝わらない」「異なる意見が出てこない」時は「自分の伝え方に改善点の余地がある」と考える。話し手は「伝え方」に責任を負うのだ。
その一方で聞き手の責任は「理解度を示す」というものがある。ちゃんと伝わったかどうかは話し手には判断がつかないため、「この部分が理解できない」ということは聞き手が伝えるのだ。そうすることで話し手は「別の言い方をして伝えよう」となる。
話がわからなかった場合、つい聞き手は「自分の頭が悪いから理解できなかった」と考え、その場では何も言わない事が多いが、堂々と「わかりません」と言うべきなのだ。
わかったふりをするとこうも損をする
しかし現実には、会議で堂々と「それはどういう意味でしょうか」と質問する人は少ない。多くはその場では黙り、後になって「結局あれってどういうこと?」と個別に確認したり、陰で「あの発言おかしくない?」と不満を漏らしたりする。
その理由は「恥ずかしい」「無能だと思われたくない」「空気を壊したくない」といった心理的ハードルがあるからだ。それ自体は人間として自然な反応であり、理解出来なくはない。
だが、わからないままにすることで発生するリスクは想像以上に大きい。たとえば、「実はあの時、理解していなかった」「誤解してしまった」というメンバーがいると、キャッチアップに無駄な時間やエネルギーがかかる。
一つひとつは小さなズレでも、積み重なることでプロジェクト全体のコストが膨らむことになる。
理想的な会議の形
上記事項を踏まえて、筆者が持つ法人の会議で心がけていることは下記のとおりだ。
1つ目に事前に資料や内容を共有する。そうすることで、「この内容については自分は違った意見を持っていることを伝えよう」とか「用語がわからないから調べてから参加せねば」と各々が準備できる。実際、会議で出てくるのは「調べても理解できない事項」「違った視点での意見」ばかりなので一切の無駄がない。
2つ目に議事録を共有することだ。特に最近ではAIボイスレコーダーを使って、会議を録音し終了後に文字起こしをしたものをシェアすればその場で出た結論を見直すことができて便利だ。
3つ目に質問者を正しく評価することだ。価値が高い意見とは話し手が見落とした多面的な視点である。筆者もこうした記事を書いていて反論をもらうことはよくあるが、「その発想はなかった」と感じた時はありがたいと思う。会議で発言することで参加者全員で様々な視点を共有することになるので、まさに「会議をする価値」そのものと言える。
◇
「わからない」が言えない人は信用されない。わからないまま持ち帰られると、仕事は遅いし個別フォローも必要になり、大事な仕事は任せてもらえなくなる。事前に調べたり意見を出す努力をした上で「わかりません」とハッキリ言う人はズレないので信用されるのだ。
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