JALとANAはアメックス・マリオットボンヴォイに学べ

旅行をする人にとっては最高のカードであるアメリカンエキスプレス(アメックス)のマリオットボンヴォイカードのサービス内容が大幅に変更され、解約を検討している人も多いようです。

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2025年11月よりプレミアムカード会員の基本年会費が49,500円から82,500円(税込)に大幅引き上げられ、家族カード年会費も上がります。

また、これまでは年間150万円以上のカード利用で最大50,000ポイント分の無料宿泊特典が付与されたのが、改定後は年間400万円以上のカード利用に引き上げられました。年間利用額が150万円から400万円のカード会員を切り捨てる決断です。

さらに、各種の特典があるプラチナエリート会員資格の獲得条件を年間500万円以上のカード利用に引き上げました(2026年1月1日から適用)。

条件を改悪する一方で、無料宿泊特典は最大75,000ポイント分となり、脱落しない人にとってはメリットがあります。

アメリカンエキスプレスのメッセージは、高額利用をしない会員は収益的にメリットがないからもう必要ないと言うことだと思います。

一方で、引き続き会員に留まる大口利用者に対しては会員数を減らすことで、サービスの改善が可能になります。コールセンターの電話もかかりやすくなり、ホテルのアップグレードやレイトチェックアウトなども対応してもらいやすくなると期待しています。

コールセンターにはクレームが来ているようですが、優良顧客に収益に見合ったサービスを提供する。企業として極めて真っ当な対応です。

ここで比較したくなるのが、JALやANAのような日系航空会社のステイタスです。

両社とも1年間で一定以上の搭乗をした利用客に対して会員ステータス付与しています。

優先搭乗や優先チェックイン、そして航空会社ラウンジが無料で使えると言った特典がありますが、今や会員数が増えすぎてサービス内容が著しく劣化しています。今やビジネスクラスラウンジは格安ホテルの朝食バイキング並みの混雑になっており、雑然とした雰囲気で利用したいと思わない時間帯も増えています。

問題は一旦獲得したステータスが永久に有効になっていて、会員数が膨らみ過ぎたことです。

例えばサラリーマン時代に出張でマイルを貯めた人たちが年金生活者になってもエコノミークラスで利用してラウンジを使う。航空会社にとって今や収益性の薄い顧客ですから、マリオットボンヴォイカードを見習って優遇顧客の絞り込みを行うべきでしょう。

各航空会社ではステータスの維持のためにそれぞれの系列のカード会社のクレジットカードの保有が条件となっています。このカードの年会費をマリオットボンヴォイ同様に大幅に引き上げることによって顧客の絞り込みができるのではないでしょうか。

日系航空会社も会員数の増加に対応してサービス内容を劣化させるのではなく、本当に重要な顧客に絞り込んでクオリティの高いサービスを提供できるように、頭をひねるべきだと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。