豊洲新市場に欠かせぬものは「市場原理」

上田 令子

このところ、豊洲新市場をどうするか知事の動向が注目されています。
公営市場とは、いうまでもなく、卸、仲卸、小売業者があって成立をするものです。殊に水産物、青果物、花き、食肉の多種多様な生鮮食料品を、買い手のニーズを捉え、適材適所に販売をする仲卸の存在は、中央卸売市場にとって市場機構の中心としても、消費者側にとっても殊に重要な存在といって過言ではありません。仲卸なくしては、市場は成立しませんことからも、その取り巻く環境、経済状況に非常に高い関心を私はもってきました。

【仲卸業者の現実】
 東京都でもその実態を把握しております。
 仲卸業者の経営状況2015

 抜粋しますと

◆売上総利益率の変化
売上総利益率(いわゆる粗利益率)は、全体では前年に比べ0.23%下降した。部類
別にみると、花き部では上昇し、その他の部類では下降した。

☆お姐分析☆
 売上総利益は、「売上-仕入コスト=売上総利益(粗利益)」となります。つまり、都の報告では、これの利益率が全体で6割近い業者が下降したと言っております。

◆営業損益の状況(2期間)
営業損益が2期連続して黒字計上となった業者は38.8%、2期連続して赤字計上となった業者は35.2%となった。黒字に転換した業者は12.4%、赤字に転落した業
者は11.5%となった。
※ 前年調査 連続黒字33.4%、連続赤字36.9%、黒字転換16.4%、赤字転落10.6%

☆お姐分析☆
 卸売業界は、もともと人件費率の高い業界でしたが、水産物、青果物、花き、食肉各部類別に見ても全てにおいて、人件費が減少した業者が増加した業者よりも大きく上回っております。営業損益の状況も、前年調査よりは減ったものの、赤字業者が48.2%となっております。2期連続赤字計上の業者は35.2%、赤字転落11.5%、2期連続して赤字となった業者の割合は、水産物部が最も多く36.4%となっておりますことからも、仲卸業者の取り巻く経営環境は、依然として厳しいと判断せざるを得ないところです。

 売上総利益率が上昇した業者数と下降した業者数の割合をみると、全体では6割近い業者が下降しています。部類別にみると、水産物部、青果部及び食肉部では下降した業者が半数を超えています。その一方で、花き部では上昇した業者が6割を超えています。

 また、「黒字業者が増えた」としてますが、実際は「販売費及び一般管理費」を抑えているとみていいでしょう。つまり人件費が減っているということかと推測されます。

【市場に求められるもの】
 来る2020年東京オリ・パラを目指して国際都市を担っていく東京において、オリンピック会場とも近いこの豊洲は、国際市場と世界には期待されるでしょう。新たな業界や外資系など、幅広く参入を促すことこそが豊洲新市場の真の活性化につながると私は考え、公営企業会計決算特別委員会で指摘をしてきました。
 併せて、すでに70近い移転辞退者が出ている築地市場の既存事業者内だけの調整では、対応しきれないと懸念をしており、既存仲卸以外の事業者が新規に参入できる機会を積極的に設けるべきでだとも再三再四にわたり求めて来ました。

 仮に経営規模の拡大を計画している既存仲卸が、移転前後に経営状況に変化が生じることもないともいい切れまませんし、移転完了後、空き店舗や倒産業者が発生しかねないことも提起し続けてます。

 今後は、世界最速で進む少子高齢化によるマーケットの縮小が予想される一方、インターネットの普及等により中間コストも抑えられことから、生産者と小売店が直接取引をしたり、何より、電話一本、メール一本で発注が済む利便性もあり、増加し続けている市場外流通にどう対応していくかが問われてる時代です。

 フェアな市場原理に従って、公募をかけ、経営能力もある、意欲もある新規事業者が外部から入れる、生かせる機会を今後も強く望むと同時に、新規に建てかえることが現実的ではない残る十市場においての将来の統廃合を視野に入れる時期に入ったと言わざるを得ない、すなわち「市場」そのものが市場原理にさらされなくてはいけないということです。

【お姐総括】
 最後に、申し伝えたいのはそもそも、豊洲新市場を所管する「中央卸売市場」は公営企業であるということです。
 価格メカニズムを通じたパレート効率性のもと、適切な準公共財の供給により、効率的な資源配分が達成されなければいけないのです。赤字になれば、税金で補填は、本来許されぬことです。ゆえに、少子高齢化に伴い膨らみ続ける福祉費と都債残高六兆円を鑑みれば、いつまでも一般会計から繰り入れがあることを当然視することなく、公費負担の軽減を将来的にも考える必要性があります。
莫大な公費を投入しての、存在意義は?
豊洲新市場問題の根源は、市場原理にさらされている「公営市場」をどうしていくかにあるのです。

【近況報告】
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全国の女性都道府県議員が繋がるネットワークが誕生しました。
党派を超えて、お互い二十代、三十代の頃からのなが~いおつきあいのあべ ともよ群馬県議、野村美穂岐阜県議、今井正子長野県議と合流でき、自治体と政局を超えた地域課題への取り組みと、今後の展開楽しみです♪お姐は、世話人になりました。

女性都道府県議会議員の会
平成28年8月22日設立

世話人
群馬県議会議員 あべともよ
奈良県議会議員 猪奥美里
長野県議会議員 今井正子
東京都議会議員 上田令子
香川県議会議員 岡野朱里子
埼玉県議会議員 柿沼トミ子
広島県議会議員 河井あんり
福島県議会議員 桜田葉子
岐阜県議会議員 野村美穂
福井県議会議員 細川かをり

事務局
長崎県議会議員 浅田眞澄美
兵庫県議会議員 大前春代(会計)
滋賀県議会議員 駒井千代

☆お姐、議会議員選挙にこそ市場原理を!だな?!☆

上田令子 プロフィール

東京都議会議員(江戸川区選出)、地域政党「自由を守る会」代表、地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)副代表
白百合女子大学を卒業後、ナショナルライフ保険(現ING生命)入社後、以降数社を経て、起業も。2007年統一地方選挙にて江戸川区議会議員初当選。2期目江戸川区議会史上最高記録、2011年統一地方選挙東京都の候補全員の中で最多得票の1万2千票のトップ当選。2013年東京都議会議員選挙初当選。2014年11月地域政党「自由を守る会」を設立し、代表に就任。2015年3月地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)を設立し、副代表に就任。

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