中間業者を排除し、効率を上げ、利益率を上げる動きはこの30年、様々な業界で革命的に起きてきたと言えます。この後話題とする商社もかつては中間業者である「口銭稼ぎ」と揶揄されましたが改善し、今があります。今、この中間業者改革の焦点になりそうなのがコメと書籍。コメはたくさん業者が絡むことで流通にブラックボックスが出来ます。これが農水省の判断を誤らせた要因の一つと私は考えます。書籍も取次をなくす動きが出てきています。これは私の本業でもあるので興味深い展開ですが、正直、取次業務はITとAIで代用できると思います。産業は確実に淘汰を巻き込みながら成長していくと言えそうです。
では今週のつぶやきをお送りいたします。
バフェット氏は商社がお好き
今週号の日経ビジネスの特集が「バフェットと総合商社 『神様』が認めるコングロマリット」。同誌がどこまでバフェット氏の商社好きを予想していたのかは知りませんが、今週、同社は日本の5大商社の保有株を買い増しすると発表しました。現状各社8-9%台の保有率ですが、概ね1%ポイントほど買い増しするように見えます。そして同誌によるとバフェット氏は「商社株は50年は売らない」と述べています。言わんとしていることはよくわかります。そして短期売買が多い最近の株式市場参加者への強烈な皮肉にも聞こえます。
バフェット氏はインフラとなるような会社を好んでいます。この場合のインフラとは道路や港湾という狭義の話ではなく、社会一般に人間が必要とする業種を指します。同氏が石油株が好きなのもそう簡単に脱炭素化は起きないだろうと考えている節があります。最近では医療保険大手のユナイテッド ヘルスに2300億円突っ込んだと報じられています。今回の商社の買い増しは広く社会のインフラ基盤となる日本のこのユニークな業界が安定的に成長すると見込んだものと思われます。かつては「商社冬の時代」「商社不要時代」と言われたこともありますが立ち位置を変え、また社会が商社の利用価値を見直したこともあるでしょう。もちろん、三菱商事の海上風力発電事業失敗及び撤退という悪い例もあります。ただ、商社がもつ様々な業種の権益は確かにすさまじいものがあります。
もう1つは「商社はリスクを取る」という点も忘れてはなりません。もちろん、その意味は「切った貼った」という大雑把なものではなく、「精査を尽くして賭け、粘り強く尽力する」といったほうが良いでしょう。最近の日本の一般企業にはこのリスクへの取り組み方がより保守的になっているように見えます。「自分が社長の時にはそんな改革的なことはできない」と。そんな中で商社は過去、温度差はありますが、果敢に攻めたという点ではさすがだと思います。バフェット氏は「経営に積極姿勢がある商社」という点も当然見ているのだろうと察します。
止まらない出生数減
1-6月の暫定出生者数が発表になり、昨年同期比3.1%減の33.9万人となりました。これには外国人も含まれています。24年の出生者数のうち外国人が3.5万人、4.9%でしたのでこれを当てはめると1-6月の日本人の出生者数は32.2万人程度と類推できます。年間に直すと64.4万人。24年が68.6万人でしたから出生者数減少ペースは収まっていないということになります。このままでいくと2030年に日本人の出生者数が50万人を切る可能性が出てきてしまいます。(最悪のシナリオの場合です。)

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以前から申し上げている通り、少子化傾向は日本だけで起きているわけではなく、世界中の潮流であります。特に東アジア、一部の東南アジアと欧州が目立って悪く、カナダですら出生率は1.26でしかないのです。故に移民を増やし続けているのです。私は以前から言っているように成熟化した社会ほど出生率は下がると見ています。また激しい受験戦争や就職戦線がある東アジア全般も同様かと思います。それは教育費に金がかかることよりも教育する手間が問題なのではないかという気がしています。カナダでもティーンエージャーを持つ親は習い事の送り迎えで親はへとへとになっています。
ではこのまま日本の人口は収縮を続けるとお前は考えるのか、と言われると歯止めがかかる時がいつかは来るかもしれないと思います。それは生物界の種の保存という考え方が潜在的に起こりうるからです。ただし、起こらない確率もあります。それは人類の歴史で民族が消えたケースなどいくらでもあるわけで、長いホモ サピエンスの歴史の中で淘汰は必然であるのです。そういう意味では現在約130万人の日本人が海外に住んでいますが、その人たちが日系2世、3世…とつないでいけば案外、祖先を日本人に持つ人として広がりが出るのかもしれません。民族と共にブラッド(血統)という考え方も一つあるのでしょう。
インド、別の意味の自由主義
モディ首相が日本に来日し、日経に単独インタビュー記事が掲載されています。果たして日本とインドは仲良しになれるかのでしょうか?そんなことはスズキに聞きたいところです。そのスズキ、日経によるとインド子会社の価値(7.6兆円)の方が親会社(3.8兆円)を上回る状態まで成長しています。ただ、スズキが今日のインドにおける地位を得るまでの苦労は相当なものだったと何度か読んだことがあります。私の周りにもインド人はたくさんいますし、ビジネスをすることもありますが、真の意味での意思疎通にはまだ遠い気がしています。
私の勝手解釈なインドの自由主義とは「何にも束縛されず、その場その場で最適解を選択できる自由」ではないかと思うのです。インドが民族問題、宗教問題、更に隣国のパキススタンと中国と揉め、バングラディシュやスリランカもインドには一線を置きます。当然国内統治と外交もたやすくないわけです。その中である特定のグループ、例えばBRICSに縛られると長短が出ます。そこでQUADができて日本とインドは急速に対話を増やしました。ところがメンバーの一つアメリカとはしっくりいきません。日経のインタビューではモディ首相は「クアッドは04年のインド洋大津波という壊滅的な災害への対応として、4つの民主主義国家の自発的な連携から始まった」と述べています。あれ?南シナ海への中国の進出を阻止するためじゃなかったのか?と疑問を持った人はいらっしゃったでしょうか?
モディ首相はこの後、中国に行くわけでクアッドが対中国を意識したものだとは言えないわけでしょう。またストーリーラインを変えることに何ら躊躇しないのがインドの特徴とも言えるのです。もちろんインドは次のリーダー国になることはほぼ間違いなく、日本がインドを軽視する選択肢もないのです。よって石破首相は会談を無事にこなしていますが、今はむしろ日本がインドに「揉み手」で接するしかないというのが実態ではないでしょうか?自由主義インドが今後、力をつける中で同国が将来、荒唐無稽な我儘なふるまいをしないことだけを祈ります。ここは逆に日本は抑えの戦略をたてた方が良いでしょう。
後記
今週は夏の最後。北米は月曜日がレーバーホリディで火曜日から本当の新学期が始まり、気持ちを一新するときになります。私は夏は業務も忙しいし、来客も多いので夏にゆっくりしたことはほとんどなく、週末もあるのかないのかという日々が毎年続きます。なので正直、「ようやく9月になってくれた」という安ど感があります。私の会社があるエリアは観光客でごった返しており、歩くのにも一苦労するようなところ。まるで「大賑わいのリゾート地で働いているスタッフ」のような状態からも一気に解放されると思うと「夏の終わりのハーモニー」が聞こえてきそうであります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月日の記事より転載させていただきました。






