日本経済新聞の記事によれば、東京23区の家族向け賃貸住宅の平均家賃は2024年に月21万円を超え、所得に占める割合も約34%に達しだそうです(図表も同紙から)。

家賃の上限は可処分所得の3割程度と言われており、34%ということは既に限界を超える水準といえます。
もはや子育てをしている標準的なファミリーが東京23区に住むのは難しくなってきていますが、これは異常なことではありません。諸外国の中心都市を見れば似たような状況だからです。
例えば、アメリカのニューヨークではマンハッタンの中心部に住むのは単身者が多く、ファミリー世帯はニューヨークの郊外に住むケースが多くなっています。フランスのパリやイギリスのロンドンでも状況は同じです。
ニューヨークのクイーンズ、ブルックリン、スカースデールといった郊外の住宅エリアは、東京でいえば千葉や埼玉のようなものです。
これからさらに加速するのは東京23区の「マンハッタン化」です。マンハッタンと同じように誰でも住めるエリアではなくなるということです。
日本の普通賃貸借契約では家賃は退去した時にしか引き上げることができないのが原則です。つまり他の物価に比べて遅効性があるといえます。
しかも不動産価格の上昇によってマイホームを諦めた人たちも賃貸マーケットに参入してきます。
今後も家賃の上昇がじりじりと継続すると考えた方が良いでしょう。
そうなれば、ファミリーで東京23区に住めるのは高騰した家賃を支払うことができる高所得者か、既にマイホームを手に入れた世帯に限定されることになります。
ファミリー向けの賃貸物件だけではなく、ワンルームマンションの賃料も上がっています。単身者もある程度の所得がないと、東京23区に住めなくなる日もそう遠くないでしょう。
東京23区のこのような変化は、東京が国際都市としての地位を獲得したことを示していると言えます。東京23区の不動産の評価は大阪や福岡と比較するのではなく、ニューヨークなどの都市と比較するべきでしょう。

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編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年9月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。






