S&P 500は金融相場への移行間際

S&P 500は短い調整を済ませて再上昇した。

火曜9/2は先週の記事でも触れた通りアンチ・ゴルディロックスの動きが優勢であり、その動きは厳つかったが、「日柄より値幅」と言わんばかりに1日で終わってしまった。GOOGLが独禁法訴訟で勝利したことでナスダックの雰囲気が一気に改善した。

連続した経済指標はいずれもやや弱く、(9月利下げをまだ懐疑していた愚かしい債券投資家を除いて)心の準備ができたところで突入した雇用統計もやや弱い感じに出たため、S&P 500もナスダックも一時過去最高値を更新した。もっともそこでは高値追いが誘発されるわけでもなく寄り天となっている。

9月から利下げ再開が決定的になるのは喜ばしいことであるが、一方で「そもそも思ったより景気が悪い」と考えた市場参加者もいたかもしれないが、bad news is bad newsと言うほどは下げ幅がきつくなく、利食いの範疇と思われる。ブロードコムAVGOが決算で飛ばし、バーターでNVDAが売られたが、どちらを先導株と見ていたかで雰囲気が違ってくる。

GS CTAもVolコントロールもついに100パーセンタイルまで装填されている。これは機械勢がもはや上げのドライバーにならない一方、もし大きなクラッシュがあった場合のマグニチュードは重くなりやすいことを示唆する。

DBのポジショニングでもシステマティック勢は90パーセンタイルに到達している。一方、裁量勢のポジションは引続き中途半端であり総楽観というほどではない。

BofAのディーラーガンマは6500から6600にかけて分厚いコールウォールが築かれた。これを見ると金曜9/7に指数が6500を超えた時の市場の反応が冷めていたのも納得できるし、基本的には大きく動きづらい分布となっている。ネガティブガンマに突入するのは6300割れであり、これはテクニカルで言うと現在の上昇フラッグの底を抜けたケースに該当する。

Mag7の収益期待は大きく上方修正されており、これはメインストリートの景気とはあまり関係ないので、ただいつ金融相場への移行でブーストがかかるかにのみ注目される。この移行がすんなり行くかどうか、つまり金利が素早く十分に下がるかどうかだけである。行かなくてある程度のクラッシュが起きたとしても、早かれ遅かれ移行が完了するだろう。

NAAIMは一進一退が続く。GSセンチメントも同様であり、これは裁量投資家のポジショニングが中途半端であることと合致する。

今週は物価の週であり、水曜9/11にCPIが控えている。先週の記事ではCPIこそ最大の鬼門と見なしたが、それは雇用統計がこれほどクリアなシグナルを出すとは期待していなかった背景に基づいたものであり、ここに来てはCPIがどんなに関税インフレを示唆しようと9月利下げがブレることはまずない(先週の記事では「どのように出ようと9月利下げが最終的には揺らぐことはまずないが、アンチ・ゴルディロックスな過程は想定できる」していたが、9月利下げが揺らぐことはまずないにもかかわらずアンチ・ゴルディロックスに色気を出したところ、1日しか寿命が持たなかったのは当然であった)。

むしろ――確率は決して高くないが――CPIまで冷え込んで催促相場に入った方が気持ち悪く、その場合は9月FOMCまでゴルディロックスにならないだろう。

「CPIでスタグフレーショナリーに出るショックに備えなくてよくなった」とヘッジ解除に動くかというと、少なくとも金曜はそうならなかった。幸い今月はPPIが先に出るのでその後に判断する余地も出て来る。CPIが「普通の数字」になればしばらくそれ以上のマクロリスクはないだろう。

インサイダーは一進一退に戻った。

テクニカル。前回の記事では「レジスタンスはS&P 500で見るよりもナスダックの21740がそれなりの強さを持つ。S&P 500の6500近辺で何となく立っているコールウォールもレジスタンスになりやすいだろうが、高値の6508はせいぜい日足レジスタンスであり、週足サポートの6343は健在である。もっとも季節性の悪さもあって6343をトライしに来る可能性はそれなりにあるようにも見える」としていたが、週足サポートの6343は今でも健在である。

先週の調整ではかなり近い6360まで試した。その結果、7月に続いて再び水平に近い緩めの日足上昇トレンドラインが出来ている。ナスダックについては豪快に調整した後、寄り天にはなったものの確かに21740はブチ抜いたので、レジスタンスは消滅し火曜安値の21000がサポートとなる。

金曜の寄り天陰線は最近頻発しており、ただ単に金曜がそれまでの動きの反転になりやすいだけで深い意味はない可能性もあるし、逆に鬼より怖い一文新値にも見える。

機械勢がお腹いっぱいで高値を追い掛けていく主体が不在である一方、裁量投資家はある程度下がったところでは拾うだろうから、これまでと同様の、押し目買いの前には一呼吸置く、くらいが最も適応しやすいか。仮に続落してS&P 500の6343とナスダックの21000が割られた場合は月内いっぱいくらいは調整が続きそうである。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年9月7日の記事を転載させていただきました。