
「Yahoo!ニュースエキスパート」に、『小中学生の学力低下問題原因はコロナ禍?デジタル教科書?塾が指摘する「小学校の探究や対話型授業」問題』と題された記事がありました――2025年7月、(中略)まず14日に文部科学省は小学6年と中学3年を対象に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、中学国語で記述式の平均正答率は3割に届かず、3割近くが無解答だったと発表しました。31日には子どもの学力の変化をみる国の「経年変化分析調査」(2024年度)の結果が公表され、2021年度より全教科で成績が下がったことが分かりました。
先週木曜日「デジタル教科書、使用教科・学年の指針策定へ30年度ごろ無償配布」(日経新聞)と報じられましたが、冒頭「受験ジャーナリスト」の筆者「が取材をした限りは問題は2020年以降の教育指導要領で、小学校での学びに探究学習やアクティブラーンニングが入ってきたために、基礎学力が身に付かなくなっているという意見が実に多かった」とのことです。要因は複合的で、様々挙げられましょう。私見を申し上げれば、根本的には情報機器の類が余りにも便利になり過ぎたが為、人間の思考力に一種の退化が生じているのだろうと思います。
私は此の「北尾吉孝日記」で以前『Googleについて』次のように述べました(10年3月5日)――人によっては考えるというプロセスの殆どをGoogleにより省略して行こうとする人もいますが、その行為は人間にとって非常に危険なことであると思います。やはり考えることで人間は進歩して行くわけで、余りにもGoogleに頼りすぎると人間は考えるということをしなくなり、人の考えを見るだけになってしまいます。つまり考えるプロセスを無くしてGoogleに考えてもらうとするならば、それはインプットした人の考えだけの世界になってしまう危険性があると言えるでしょう。
昨今で例示すれば、ChatGPTが齎す弊害です。本来人間というのは何かを得る為、時間を犠牲にし労力を使うといった中で、努力の上に新しきを吸収し深め行くものですが、それをせずにChatGPT依存が今後益々進んで行くようであれば、学力低下問題も深刻の一途を辿ることでしょう。学力の基本は思考力、クリエイティビティであります。アルベルト・アインシュタイン(1879年-1955年)も言うように、「創造力(imagination)は知識より重要である」わけで、自らの頭で考えるという行為が色々な独創的生成に繋がって行くものなのです。
ある意味答え無き問いに対し如何に答えを出して行くかという所で、その人の思考力や知恵といったものが最も顕れてきます。「学んで思わざれば則ち罔(くら)し。思うて学ばざれば則ち殆(あやう)し…学んでも自分で考えなければ、茫漠とした中に陥ってしまう。自分の考えだけで学ばなければ、誤って不正の道に入ってしまう」(『論語』為政第二の十五)と孔子も言うように、混在する学びと思索を知行合一的に動かす中で、真に知恵を磨いて行くことが大事だと思います。ハンナ・アーレント(1906年-1975年)は、こう言っています。「“思考の嵐”がもたらすのは、知識ではありません。善悪を区別する能力であり、美醜を見分ける力です。私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。危機的状況にあっても、考え抜くことで破滅に至らぬよう」にと。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2025年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。






