初心者のための経済学:第9回「なぜ専門家は未来を予測できないのか?」

こんにちは!自由主義研究所の藤丸です。

今回で、初心者のための経済学シリーズは最終回です。

ズバリ!「なぜ専門家は未来を予測できないのか?」

今までこのシリーズを読んでくださったかたは、きっとすんなり理解できる内容だと思います。

※このシリーズは、アメリカの自由主義系シンクタンク「ミーゼス研究所」の動画が元案となっています。アニメーション動画も日本語テロップ&音声にしていますので、こちらもぜひ御覧ください。

なぜ専門家は未来を予測できないのか?

古代の世界では、王は臣民に対して権力を振るうため、特別な神官の顧問集団を頼り、助言を得ていました。

これらの宮廷神官たちは、「王は神の啓示を受けており、王の行動は超自然的な予知能力によって導かれている」と民衆に説きました。

すごくシュールな絵・・・

現代では、壮大な計画を宗教的な根拠に基づいて主張する統治者は少なくなりましたが、専門家からなる諮問機関や占い師の力は依然として残っています。

いわゆる政策専門家は、宗教的な大聖堂に居座るのではなく、社会を支配するためにより大きな権力を求める政府に、「知的な正当性」を提供しています。

これにより、著名な「経済学者」を含む多くの自称「政策専門家」が、実際には「(真の)経済学者のように考えていない」ことが明らかになります。

たとえば経済学者は、「政府が特定の計画に資金を投入したり、新たな政策手段を採用したりすれば、素晴らしいことが起こるだろう」と説明します。

彼らは不完全なデータをまとめ、特定の仮定を加え、その後、自らのアジェンダに都合の良い予測を導き出します。

これらの予測はしばしば誤っており、「現実の世界に基づかない仮定」に依拠しています。

経済学者は、将来の市場における実際の価格を予測することはできません。

なぜなら、人々の欲求や需要は変化するからです。

また彼らは、予期せぬイノベーション、災害、または人間の行動の大きな変化を考慮に入れることもできません。

未来を予測できる専門家はいないのです。

だからといって、予測に価値がないわけではありません。

企業、投資家、ギャンブラーなどは、特定の分野や業界の知識を駆使して、他者よりも高い精度で出来事を予測する可能性があります。

起業家のように、予測が正しければ利益を得ることができ、間違っていれば損失を被ります。

危険なのは、「国家の権力と結びついた過信に基づく予測」です。

たとえば、2008年以前、連邦準備制度理事会(FRB)は、低金利政策によって、住宅への過剰投資が引き起こされた住宅バブルのことを、否定し続けていました。

現代

古代

FRBの失敗が金融危機を引き起こすと、中央銀行は問題を「解決」するため、自身の権限をさらに強めました。

中央銀行の専門家は、経済成長や将来の金利に関する予測について、一貫して誤っています。

そして同様に一貫して、彼らは世界の資本市場への影響力を高めています。

問題は中央銀行だけではありません。

2021年、多くの政府は、コロナウイルスに関する大きく外れた予測に基づいて、経済活動を停止する決定を下しました。

多くの企業が倒産し、人々の生活が破壊されました。

これは専門家たちの誤った予測が原因です。

さらに恐ろしいことに、各国政府は資源に関する誤った予測に基づく政策を実行してきました。

たとえば、世界的な食料供給量を過小評価し、人口過剰への懸念を煽りました。

その結果、強制的な不妊手術プログラム、一人っ子政策、その他の反人道的な政策が実施されました。

その予測は誤っており、その結果、数え切れない命が失われたのです。

社会は複雑なシステムです。

存在する不確実性は切り離すことが不可能であり、そのため未来を確実に予測することはできません。

これは特に、経済、公衆衛生、地球規模の気候といった複雑なシステムに当てはまります。

適切な経済学は、世界のありのままをより深く理解する方法、個人の財産権を守ることの重要性、そして国家権力の乱用がもたらす結果を教えてくれます。

経済学は未来を予測する能力を与えてくれるわけではありません。

「人間の行動の適切な研究」を、「数式や複雑なモデル」に置き換えることはできないのです。


編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2025年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。