連立だ。維新だ。大臣ポストだ。維新の両院議員総会。聞こえてくるのは、もう政権発足が決まったかのような雰囲気だったという。大臣になれる、政務官になれる。その期待だけで、人間って変わるんだね。
藤田文武共同代表がテレビで言った。高市早苗が「大臣ポスト2つ以上」を約束したと。本当かね。政治家なんて、みんなそうやって約束を交わす。そして、みんなそうやって裏切られる。何十年もこれの繰り返しだ。
ただし、交渉の進捗次第では、閣外からの協力という形態もあり得るという観測もある。
自民の裏金を許せんの正義は
吉村洋文大阪府知事は、つい前まで何と言っていたか。街頭演説で、マイクを握りしめて「自民党の裏金政治はほんとおかしい。腹立ってしょうがない」。その声は、本気だと思ってた。
それが今は、同じ自民と手を握ろうとしている。
党内で慎重論はないのか。「本当に大丈夫か。閣外協力で一歩引くべき」。当然だ。その声こそ、本来あるべき維新の姿勢じゃないか。でも、そういう声は少数派だったんだろう。多くは政権という飴玉に群がった。正義? 秋の雲だ。すぐに散る。形をなしていない。
話を戻すと、維新と自民のルーツは実は近い。橋下を推薦したのは自民党大阪府連。松井一郎は自民党の元府議。2010年の「大阪維新の会」設立時は、自民の地方議員が大勢いた。
維新は12項目の要望を出した。吉村氏が「絶対条件」と強調したのが「副首都構想」と「社会保障改革」。
住民投票で2度も敗れた「大阪都構想」。民意で否定された。なのに、それを国政レベルで強引に通す。民主主義ってなんなのか。本当に、わからなくなる時がある。
でも待て。16日夜から17日朝のテレビ番組で、吉村氏は急に「議員定数削減」を持ち出した。「臨時国会で結論を得るべき。これを自民がのまなければ連立入りはない」。
いや、待ってください。理由は「副首都構想ばかり言うと大阪だけの維新に見える」。要するに、東京のキー局で派手にぶち上げたら「大阪のための党」になっちゃう。だから全国的な主張を急遽ぶち込んだ。
これ、戦略ですか。それとも、その場その場の言い繰ろいですか。あ、冷静になろう。議員定数削減は確かに野党も求めてきた。正統性はある。でも——やっぱり後付けっぽい。泥臭すぎる。
東京のテレビをジャックして、派手に言い立てる。自民を揺さぶって、別の利益を引き出す。それが政治家の仕事か。知らんけど。
また、自公連立の時代、公明党が議席を持つ小選挙区には、自民党は候補を出さなかった。昨年の選挙で大阪の小選挙区は維新が全勝。つまり、自公方式を踏襲すれば、自民党は大阪から完全に駆逐される。ほぼ。それが現実だ。
高市氏の「怨念」はどうなった
高市氏が維新への感情。これが複雑なんだ。妙に。
前回の奈良県知事選。高市氏は総務省時代の秘書官を擁立して、維新候補に「ボロ負け」した。ボロ負けですよ。2年経った今でも。怨嗟が渦巻いている。見える。この人の中に。
こういう感情って、政治家の意思決定に影響を与えるんだよね。直接的に。
連立は次の衆院選までで、その後は維新とガチンコ勝負になるのではないか。時限的な政権。双方が、相手の終わりを待っているだけの連立。
高市氏は、本音では維新なんか一緒にいたくないと思っているのではないか。でも政権維持のため。大阪の議席を失わないため(いや、既に失ってるんだけど)。
身を寄せ合う。維新も維新で、政権の「実」を欲しているだけ。閣内不一致を避けるため、自民批判は「いったん封印」する。そこまで計算しているのではないか。
それでも、自社さ政権よりはマシなんだろう。
昨年の衆院選で大阪の小選挙区に投票した、あの有権者。その意思は? 副首都構想に反対して、住民投票で「ノー」を突きつけた大阪市民は? その民意はもう、政治家たちの計算の中では存在しないのか。
次の衆院選までは、政権は持つんだろう。その間に何が変わるのか。何も変わらないんじゃないか。そんな気もする。本当に、そんな気がする(苦笑)
尾藤 克之(コラムニスト、著述家)
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