高市氏が首相になったら組閣後すぐにトランプ氏の訪日の対応を行い、その足で韓国で開催されるAPECに向かうことになるかと思います。(その前に開催されるASEAN会議には行かないと思いますが。)APECでは高市氏も相手も身構える中韓トップが控えています。しょっぱなから最高レベルの外交が待ち構えていると言えます。

トランプ大統領と高市早苗自民党新総裁
私の予想ですが、高市氏は本来持つ保守的な思想や発想を一旦封印し、大人の付き合いに徹するのではないかとみています。一部の報道の解説でも見られるようにイタリアのメローニ首相も極右出身ながら首相に就いてからはその色を抑え、あの難しいイタリアの政局を乗り越え、経済復興が順調に進んでいます。高市氏もそこは見習うでしょうし、ご本人も既にわかっていると思います。
では高市氏がトランプ氏とどう対峙するのか、ここが見ものですが、真正面からぶつかるとやりにくいのでするっと交わしながらも日米関係、及び安保の重要性を説いていくことになるかと思います。トランプ氏からは対中国の橋頭保、防衛費負担、関税交渉絡みの対米投資、及び米国製品の購入拡大を改めて求められるとみています。日本政府はとりあえずアメ車100台を買うといった小手先の対応の準備をしていますが、今回は自動車より日本がもう少し大豆を買うといったほうが効果的かもしれません。
ご承知の通りアメリカの大豆はかつては中国がお得意様であったのに今では中国向け輸出はゼロ。そこには中国のしたたかな戦略があり、トランプ大統領にしてみればアメリカの農家との関係という点では居心地がよくないところにいます。おまけに全米規模の「王様はいらない」デモはその規模700万人とも伝えられており、アメリカ国内の逆風が強まっていることは事実です。
このブログで以前、トランプ氏の賞味期限ということを書かせて頂きましたが、個人的にはとっくに賞味期限は過ぎており、実質無機能化しつつあるとみています。トランプ氏は議会に遠慮なく動ける外交を中心に展開しようとしていますが、最大注力を払ったイスラエルとガザの和平もひと段落したと思えば戦争を止めたくないネタニヤフ氏が再び理由をつけてガザを攻撃するなど中途半端な状況になっています。
そして私が注目する最大の「喜劇」はロシアとウクライナの仲介であります。戦争の仲介者をコメディアン扱いするのは失礼かもしれませんが、トランプ氏にはどう見てもポリシーというものを見出せないのです。「俺が欲しいのはただ一つ。停戦にこぎつけるまで仲介の労をとった俺様へのノーベル賞だ」というのがありありと見て取れるのです。最新の報道ではトランプ氏は再びロシア寄りになり、プーチン氏の要望であるドネツク州とルハンスク州を割譲したらどうかと本物のコメディアンだったゼレンスキー氏に迫り、再び両氏が言い合いになったとされます。トランプ氏は不動産事業で成功したわけですが、私から見れば不動産仲介業者が売り手と買い手の要求の間を右往左往しているようにすら見えるのです。
では中国はこのポリシーなきトランプ氏とどう向かい合うのでしょうか?マレーシアでのASEAN会議での李強氏、APECでの習近平氏との会談ではトランプ氏の準備不足でトランプ氏の勝算はあまりないとみています。中国は賢いのでケンカはしないでしょう。うまくかわす、であります。
トランプ氏はアメリカの大統領であり、本来であれば国内の様々な問題により重点を置くべきですが、今の氏にはそのような様子がほとんど見られないのです。政府機関の停止は長くなってきていますが、解決しなくてはいけないという緊迫感が薄く、議会が寄り添うきっかけすらないような感じに見えます。
アメリカの雇用と外国人労働者の問題もシリアスで国内経済や企業経営に一定の影響が出ているはずですが、統計も出てこず、あまり話題になっていません。
個人的には「トランプ後のアメリカ(Post Trump Era)」をそろそろ描き始める頃ではないかと思います。共和民主という議会の勢力よりこの刺激的な大統領の後任には更なる刺激を求めるのか、揺り戻しを求めるのか、であります。この想定こそ来年以降のアメリカの世論のバイアスとなるはずでこれを見定める必要があります。
私のイメージとしてはアメリカでは比較的高齢になった方々が人材不足で「働かされている」イメージが強く、アメリカはその輝きが徐々にくすんでいく感じを見て取っています。それは「アメリカ人の価値観」の変化であり、60年代から80年代ぐらいまでに活躍した年齢層と2000年代以降に成人した人達の間のギャップが埋められず、アメリカンブラッドのトランスフォーム(世代交代)が容易ではない気がしています。(これは根本的には日本も同じではあります。)
またトランプ氏ほど強い個性の人が出てくるとは思えず、政治のプロの方が大統領に選出されやすい心理的社会的背景が生まれると感じるのでポスト トランプ時代は手堅すぎてぱっとせず、その間に中国やインドが台頭するという流れはあるかもしれないと感じています。
よって日本としてはトランプ氏がどれだけ吠えてもそれにあまり振り回されず、日本が独自であるべき外交を進めながらも日米関係をきっちり維持していくというしっかりした戦略をもって対応すべきではないかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月21日の記事より転載させていただきました。






