不便な場所ほど不動産価値が高いその理由 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

世の中は外交問題で盛り上がっておりますが、あえて私はそちらのほうは静観し、不動産の話題でいきたいと思います。

ブルームバーグによるとサンフランシスコベイエリア地区の住宅価格が前年同月比で13%値上がりし、42万1000ドルとなり、ベイエリアの9つの郡の住宅価格(中央値)は2008年8月以来の高値となっているようです。販売件数も1年1ヶ月連続上昇しているというのです。

同じサンフランシスコでも内陸部は引き続き低迷しているようでもともと高級住宅地であったベイエリアの回復が顕著だということです。

これは世界何処でも似たような現象があり、一定以上の評価がある土地への需要は非常に安定しているのです。


例えば東京地区において松濤、麻布、広尾、成城などいわゆる人気エリア、高級住宅地が値崩れしないのは何故でしょうか? それは高い潜在需要と憧れ、更に物件数が相対的に少ないということでしょう。

半年ほど前、東京で不動産業者が「目白なら7,8000万から1億の物件は捌きやすいですが、これが板橋だと全然無理なんですよ」と言っていました。なぜなら板橋にどうしてもそれだけのお金をかけて不動産を買う理由はその土地に留まる理由がある人に限られるからなのです。ですが、いわゆる人気物件というのは全国、世界何処からでもマネーが集まってくるので売買が容易であるというのが最大のポイントなのです。

例えば私が開発したバンクーバーダウンタウンのウォーターフロントの住宅群。レイアウト上、なるべくウォータービューが取れるようにしましたがどうしてもシティビューと称する海や山の眺めが取れないユニットも生じます。デベロッパーとしてはそのようなユニットは売買しやすい小型ユニットとし、住所だけで飛びつけるような売り込み方をするのです。

例えば同じ150平米のユニットでも眺めがある場合とない場合ではリセールで10~20%も価格差が生じる上に売買のしやすさもまるで違ってきます。では、どんな場所の物件でも眺めがあればよいのかといえばこれが多くの方が間違えるポイントです。

不動産の価値はその周辺の不動産、地域特性、住民、アクセス(の悪さ=悪いほうがよい)などがファクターなのです。なぜ、アクセスが悪いほうがよいのでしょうか? 考えてみてください。白金でも麻布でも広尾でも松濤でもアクセスは悪いのです。理由は「そこに居る人しかそこに行かない」からであります。

何故でしょう? それはセキュリティそのものなのです。例えばバンクーバーの目抜きであるロブソン通りの東にはたくさんの高層コンドミニアムが建っています。正直、これらは私から言えばほとんどダメ物件なのです。なぜなら人通りの多い通りに面し、スタジアムが近く不特定多数の人が集まりやすいからなのです。

以前、山手線で住宅的価値の高い駅はどこか、というブログを書きました。覚えていますか? 答えは目白なのです。理由は目白は乗換えができない駅で「この駅に来る人はこの駅に用事がある人」に限られるからなのです。

不動産の価値の原則というのは案外わかりやすいものです。品川の高層マンションは価値限界がありますが御殿山は素晴らしいというのと同じです。

こういう観点で不動産をみてみると実にいろいろなことが見えてくると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。