高市早苗首相の所信声明の時、議会の野党議員からヤジが飛び、首相の話が聞きずらくなった、といった苦情が聞かれた。ヤジを飛ばしたのは野党「立憲民主党」の水沼秀幸議員や岡田悟議員だった。議会でのヤジに対してソーシャルネットなどで批判の声が出ていることに対し、同じ立憲民主党の小西洋之議員はXで「ヤジは非常に重要な国会議員の議会活動」とヤジの意義を強調している。

第219回国会における高市首相の所信表明演説 2025年10月24日 首相官邸公式サイトから
小西議員の「ヤジ擁護論」について、前参議院議員・音喜多駿氏は日本最大の言論フォーム「アゴラ言論プラットフォーム」で反論されている。音喜多氏は「議会風景を“怒号と割り込みの場”にしてしまえば、民主主義制度の根幹である『言論の場としての国会『「首相演説を国民に届ける場としての国会』が、形骸化・劣化してしまいます」と述べている。

いつだったか忘れたが、香港やバルカン諸国の議会で議員同士が殴り合うといったシーンを見たことがある。どちらに義があるかは別として、国民から選出された議員の品位に傷がつくことは間違いない。
ヤジといえば、トランプ大統領は13日、イスラエル国民と共に人質解放を喜ぶためにイスラエル入りし同国議会(クネセト)で演説した時、2人の男性議員がヤジを飛ばした。同大統領はちょっと驚いた表情を見せたが、演説を続けた。ヤジを飛ばした議員は議会の警備員らに連れられ、議会から退去させられた。
ちなみに、トランプ大統領は「ウオー・イズ・オーバー」(戦争は終わった)と宣言し、「中東の歴史的な始まりだ」と強調、同大統領の演説中、クネセトは熱狂に包まれていた。そのような中、ヤジが飛ばされたのだ。ドイツ民間放送ニュース専門局NTVのライブ中継を見ていた当方も一瞬、何が起きたのか緊張した。
いずれにしても、議会はヤジを飛ばすところではなく、互いに政策を議論し、研磨する場所だから、感情の暴発的なヤジは議会進行を阻害するだけだ。ましてや、首相の所信声明演説の時、国民もその内容に耳を傾けている時だ。
ところで、政治家や宗教者は語る機会が通常の人より多い。政治家は自身の政策を、宗教者は自己の信仰や教えを他に伝えることをその使命としているから、ある意味で当然かもしれない。また、現代は「沈黙は金」ではなく、論理的、実証的に相手を論破する能力が評価される時代でもある。
ただ、忘れてならない点は、相手が何を考え、何を伝えたいのかを冷静に傾聴する姿勢こそ今、最も願われているのではないか。新約聖書『ヤコブの手紙」第1章19節には「愛する兄弟たちよ、このことを知っておきなさい。人はすべて、聞くに早く、語るにおそく、怒るにおそくあるべきである。人の怒りは、神の義を全うするものではないからである」と記述されている。
米国人初のローマ教皇に選出されたレオ14世について、バチカン教皇庁の関係者は「新教皇は話す人というより相手の話を聞く人だ」と述べていた。自分の話を真剣に聞いてくれていると分かれば、その人は慰められ、心を開くものだ。
最後に、高市首相のヘアスタイルについて聞いた話を紹介する。高市首相のヘアーカットは行きつけの奈良の美容院でやってもらうという。耳を覆うヘアスタイルにしていた当時、美容院のオーナーから「耳を覆うのではなく、人の話をよく聞くため髪を耳にかけたスタイルのほうがいいのでは」といわれたことから今のヘアスタイルになったらしい。高市首相が国民の願い、希望に耳を傾ける指導者となって国家の再生に全力を投入して頂きたい。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年10月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






