社員の半数が50代以上のパナソニックは氷河期世代を切り捨てた日本企業の末路か?

ことし5月、パナソニックホールディングス(HD)は国内5000人規模の人員削減を発表したが、単なるコスト削減では済まない状態になっている。同社は、国内社員の約半数が50代以上という歪んだ年齢構造を是正する必要背があるという。

参照リンク:パナソニックHD、国内社員の半数が50代以上 人員削減でメス 日経新聞

  • 国内社員の約半数が50代以上
    2025年4月時点で、パナソニックHDと主要7社の国内社員は約6万人。そのうち約48%が50代以上を占める。今後3〜4年で3割超が定年を迎える見通しで、定年ラッシュを前に組織の若返りが急務となっている。
  • 背景にある人事の歪み
    バブル期に大量採用した後、氷河期には極端に採用を絞り、さらに松下電工や三洋電機の買収で間接部門が重複した。統合を先送りした結果、余剰人員を抱えたまま新陳代謝が滞り、年齢構成が偏った。氷河期世代を冷遇し、バブル世代を厚遇した“歪んだ人事構造”がいまツケとなって表面化している。
  • 5000人削減の狙いと手法
    主に家電・空調事業を中心に、勤続5年以上の40〜59歳社員と再雇用者を対象に早期退職を募り、26年3月期中に実施予定。転職支援も行うとしている。
  • 物流・調達の共通化による効率化
    京都府に新設した大型物流センターを拠点に、関西の物流業務を集約。年間10億円のコスト削減を見込む。調達でも共通システムを導入し、25年3月期には60億円のコスト減を達成した。こうした効率化を人員構造改革と並行して進める。
  • 投資家の厳しい視線と成長課題
    日立やソニーが先行して構造改革を終えたのに対し、パナソニックHDは対応が後手に回った。市場関係者からは「成長への意識が薄い」との指摘も多い。

かつて「経営の松下」と呼ばれた名門は、時代の変化に対応できず、バブル世代中心の高齢化組織へと変質した。長年の“採用氷河期世代冷遇”の結果、若手が薄く、活力が乏しい構造に陥っている。今回の人員削減は避けられぬ「老朽化した組織の手術」だが、痛みを伴う処方である。再生のカギは、かつて見捨てた世代のような新しい人材をどれだけ引き寄せられるかにかかっている。

パナソニックHPより