横行する詐欺、なぜ?:ネット社会とダークな世界の背中合わせ

詐欺はする輩はともかく、引っかかる人がいるからこそ成り立つものです。世の中、皆、賢くなり、詐欺防止が徹底し、詐欺かどうかが自動的に判別できるようになれば世の中の詐欺は理論的には激減します。

警察庁のウェブサイトによると今年1-8月の累計の特殊詐欺は昨年同期比件数で42%増、金額ベースではなんと136%になっています。手口はニセ警察官詐欺が全体の37%、被害額で68%と断トツであります。つい数年前まではニセ警察官の手口はあまりなかったので詐欺グループの手を変え、品を変えとの鼬ごっこという感じがいたします。

ところでどんな人が詐欺にかかりやすいか、あるウェブの解説によると「お金に困っている人」とあります。なるほど、絶妙な心理ゲームなのですね。お金が欲しいからちょっとしたきっかけでもすぐに食らいついてしまうということでしょう。ただ、個人的にはお金に困っている=お金が欲しい=盗むお金がさほどない、という気もします。むしろ、私は貪欲な人、及びそれと真逆の心配性の人が狙われるのだと思います。

心配性とは降ってわいたような話に本当かどうか、判断できず、相手の巧みな話しぶりについその気にさせられるというケースではないでしょうか?特に高齢者の方の場合、電話の向こうで小難しいことを言われたら思わず信じてしまうことは大いにありえます。「今の時代はこうなっているのです」と言われれば「はぁ、そうなんですね」と思わずうなずくようなことってありますよね。

私のEmail。うざいほどフィッシングメールが来ます。もちろん、フィルターをかけており、フィルターを見れば毎日よくこれだけフィッシングメールが来るな、と思うのですが、その網を潜り抜けて着信するメールもポツポツあります。私はまずは発信者のドメインを見ますのでそこが怪しければ一瞬のうちに消去です。ただ、時としてよくこんなフィッシングを考えたな、と思う出来の良いものもあります。「送金ができなかったので連絡ください」「あなたの口座の情報が洩れています」「定期預金の満期が近いので連絡ください」「納税額がたりません」「予納税金のお知らせです」…。自分が取引関係にない銀行ならもちろんポイなのですが、自分が取引している銀行名やカナダ歳入局を語り、ロゴマークを付け、いかにも本当っぽいメールのフォームだと思わず見入ってしまうこともあります。こうなると判断材料は現時点で送信元のドメインしかないのです。

基本的には銀行から担当以外から連絡が来ることはないのが前提だとわかっていますが、それでもドメインが将来偽造され、当該企業のものにそっくりとか同じものが出れば騙されるかもしれません。つまり私自身、怖いのであります。

判断に悩む場合、仮に重要そうなメールでもゴミ箱に入れ永久消去してしまうことにしています。理由は本当に大事なら何度かアプローチしてくるでしょう。電話もそうです。怪しげな電話は時折かかってきますが、知らない番号とか知らない市外局番の場合、取らないで放置しています。もしもその電話主が真剣に何か私と話をしたければメッセージを残すでしょう。それで判断するしかないのです。

近年、一部の銀行の窓口に行くときはスマホが絶対不可欠になりました。私が銀行窓口で業務依頼する立場にあるかどうかのチェックです。かつては身分証明書を提示するだけでよかったのですが、最近は二重になっており、銀行に登録された私の携帯に銀行の窓口の人(テラーさん)が「あなたの携帯にメッセージを送信したのでそのメッセージにある5桁の認証コードを教えてください」と言われます。そこまでしないと本人確認ができない時代になっているのです。

企業は詐欺に加担しないように異様な気配りをしています。ただ、個人はまだまだわきが甘いと思います。例えば私はノートパソコンの画面の上部についているウェブカメラをオンラインミーティング時以外、蓋を閉じています。(機種によりいろいろありますが、私のはスライド式の蓋がついています。)理由はのぞき見する輩がいるのです。これは私が実際に引っかかりそうになったので特に気をつけています。のぞき見して後で脅しのメールを送りつけてくるのです。「おまえ、〇月〇日、何時に〇〇をしていただろう」と。これはさすが血の気が引きました。

日経ビジネスに「オンライン詐欺が75兆円超の巨大ビジネスに 米英、アジア詐欺拠点撲滅へ」とあります。記事ではカンボジアを拠点とした一大詐欺グループの話を中心に展開しますが、アメリカ政府がカンボジアの詐欺グループの資産2兆5000億円を差し押さえたという話からスタートします。そして世界全体でみたオンライン詐欺被害額はなんと年間75兆円にも上るそうです。カンボジアの場合、20万人の外国人が有刺鉄線で囲まれたエリアで働き、カンボジア政府も取り締まる気配がないそうです。また一部のグループは拠点をUAEとかジョージアに動く気配もあると報じています。

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詐欺グループにとっては国境はすでになく、ネットと電話があれば世界をうろつき続けるのでしょう。企業ベースではアサヒビールとアスクルがサイバー攻撃を受け、いまだに解決していません。両社とも業績への影響は大きく、それよりもどうやって終止符を打つのか気になります。一部情報漏洩が確認されている中で、身代金を払うのか、敵対したまま解決できるのか瀬戸際にあると思います。このような事件はもはや驚くべきことではなく、いつどこで誰が被害にあってもおかしくない、そんな時代です。

現代社会においてネットと遮断することはほぼ不可能になりつつあり、遮断すればその不便さはかつての比ではありません。ネット社会を謳歌する一方、このようなダークな世界が背中合わせであることは各自の防衛策を強化して頂くしか守りようがないのでしょうね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年11月9日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。