お鮨屋さんの魅力は「握り」だけではない

目黒にある看板のない鮨店に出かけました。カウンター4席だけの静かな紹介制のお店です。

こちらのお店の最大の魅力はワインを合わせてお鮨が出てくることです。高級なワインバーで出てくるような素晴らしいラインナップで、お寿司とも相性もよく考えられています。

全てがワインと言うわけではなく、白子やカラスミのようなお料理には日本酒を合わせて出してくれます。この日も白子にはぬる燗のお酒を合わせてくれ、これがとてもよく合いました。

ワインはマニアックなドイツのスパークリングワインに始まり、後半では一級畑のシャブリや1996年のエシェゾー、2011年のピュリニイモンラッシェまで出てきました。

これらのワインに合うお料理が次々と出され、私のようなワインとお鮨が好きな人には最高です。

お鮨だけなら、同じレベルで提供するお店は他にもあるかも知れません。しかし、ワインとお鮨の両方をこのレベルで合わせるお店は私の知る限りありません。

お鮨屋さんとはお鮨を出すだけのお店ではありません。お鮨に何かを掛け合わせることが魅力的なお店になるために必須です。

例えば、以前ブログで紹介した北九州市小倉にある照寿司さんは世界で最も有名な寿司職人の渡邉さんが握ってくれます。

お寿司が美味しいのはもちろんですが、そのエンターテイメント性に、来店者がディズニーランドに来たように感じる楽しさがあります。

お寿司食べに来る人は「握り」だけを食べるわけではありません。その時の雰囲気や一緒に合わせるお酒など、様々なものから総合的に感動を得ているのです。

とすれば、お寿司だけではなく、それに何かを掛け合わせるかによって、新しい価値を作り出すことでオンリーワンの存在になることができます。

そんなことに気がついて実践している寿司職人は強い差別化によって生き残っていけると思います。

お寿司の握りの技術を極めることも大切かもしれませんが、それ以上にお寿司に何を掛け合わせるかを考え、それを提供していくことの方がお客様に対する感動が提供できる。

飲食店経営者には職人気質の自己満足よりも、お客様視点のサービス精神の方が大切なのです。お客さんに講釈を垂れ威張っているような親方のいるお店には少なくとも私は行きません。

画像はイメージ
Chadchai Krisadapong/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年11月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。