「変わらないマネー誌」に期待すること

毎月20日は月刊のマネー雑誌の発売日です。今朝の日本経済新聞の広告欄には2つの雑誌が仲良くなんで掲載されていました。どちらも「株で1億円作る」というマネー雑誌定番の企画です。

私の過去のブログ記事を検索してみると、2017年にも同じような内容で雑誌が発売されていたことがわかります。もちろん銘柄は変わっているはずですが、書いてあることは変わっていないはずです。

この時に書いたのは、株式の個別銘柄選択で1億円作る事は再現性がなく、極めて確率的に分の悪い方法であること。そして、仮に1億円を手に入れたとしても人生のお金の問題は解決しないという2つのことでした。

この考え方は今でも変わりません。

少数の例外的な成功した投資家(その多くはまぐれ)を除けば、多くの人は個別株式銘柄投資を行ってもインデックス以下のリターンが得られていません。中には今年のような上昇相場にも関わらず銘柄選びに失敗して大きな損失を出している人もいるはずです。

確率的に考えれば、個別銘柄を選ぶアクティブ運用より市場の平均を取りにいくインデックス運用を行った方が資産を増やす可能性が高い事は明らかです。

また、インフレと円安によって1億円の実質的価値はさらに下落しています。

株式投資でもし1億円を手に入れたのであれば、それを取り崩して生活するのではなく不動産のようなインカムゲイン(定期的収入)が得られる資産にシフトさせた方が、将来の安定したキャッシュフローが得られます。

お金を借りることができれば、さらに多くの不動産を手に入れることができ、金利差からの収益も狙えます。

10年近く経っても内容が全く変わらないマネー雑誌のマンネリ感は読者のニーズに答えているだけなのかもしれません。

だとすれば素晴らしいマーケティングセンスと言えますが、そのニーズに合わせるだけではなく、真に投資に役に立つ内容を提供し、読者を教育・啓蒙する位の意気込みを見せて欲しいというのが私の期待です。

gevende/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。