「週休3日・安定志向・AIは触らない」:Z世代が指し示す日本経済の未来

Z世代の働き方観が、従来の日本型雇用から大きく飛躍しつつある。ヒューマンホールディングスの最新調査では、週休3日や柔軟な勤務を求める声が多数を占め、キャリアアップ志向やリスクを取る姿勢は極めて弱い可能性が浮き彫りになった。

参照リンク:Z世代、35%が週休3日希望 「無理せず・安定」に重き 民間調査 日経新聞

国を挙げて若い世代に「無理をさせない」仕組みを広げてきた結果、働き方の価値観は大きく転換している。こうした流れは日本の生産性や経済成長にどのような影響を及ぼすのか、改めて問われる局面だ。

  • ヒューマンHDが全国の会社員・団体職員のZ世代(20~29歳)1000人を対象に実施した調査で、職場に導入してほしい制度の1位は「週休3日」(35.1%)となった。続いて「フレックスタイム」(20.1%)、「副業・兼業の許可」(18.5%)が挙がり、働く時間や場所の柔軟性を求める傾向が顕著だった。
  • 「自分らしい働き方」では、「ワークライフバランスを保ちながら働く」(18.1%)が最多で、「仕事とプライベートをきっちり分ける」(15.9%)が続いた。一方、プライベートを犠牲にして目標達成を優先する」回答は2.4%に過ぎず、無理をしない働き方を求める姿勢が明確になった。
  • 転職や独立についても消極的な回答が目立ち、「経験値を広げるために転職・独立を重ねる」は2.1%にとどまる。生涯キャリアの再構築が叫ばれる中でも、Z世代は安定志向が強い。
  • 「働く目的」をポイント集計すると、1位は「経済的な安定を得るため」(1,721点)、2位は「安定した人生を送るため」(916点)で、キャリア・スキルアップよりも「安定」を軸にした価値観が支配的だった。希望する働き方も6割超が「プライベート重視」だった。
  • デジタルネイティブ世代とされるZ世代だが、生成AIの業務利用については「活用していない」が46.5%で最多。業務への本格活用は依然として慎重姿勢が強かった。
  • ヒューマンHDは、プライベート重視は「健康や生活の質を維持しつつキャリアを長く続けるための戦略的選択」と分析。一方で、働き手全体がリスクを避け、企業側が人材の成長性に期待できない状況になれば、生産性停滞や経済成長の鈍化が懸念される。
  • 若い世代の「無理をしない働き方」の広がりは、結果として「人には期待できない」という企業側の現状認識につながっている。AIの活用やDXが注目される背景には、日本の人材育成の行き詰まりも透けて見える。

今回の調査は、Z世代が明確に「安定」と「ワークライフバランス」を優先しており、スキル習得やキャリア投資には慎重姿勢を保っている実態を示した。だからこそAIに突破口を見出そうとする動きが強まるのも必然だと言える。若い世代の価値観を尊重しつつ、企業・社会がどう持続可能な成長モデルを構築するかが問われている。

それでも社会からのZ世代への期待は高い