AI委員会を発足した朝日新聞、早速「AI加工」タヌキ写真を見抜けず掲載

朝日新聞が、生成AIによる加工写真を見抜けずに紙面に掲載してしまった。AI・ディープフェイクが社会的脅威になりつつある中、報道機関が見抜けなかったという事実は重い。朝日自身が9月に「AIに関する考え方」を公表したばかりだっただけに、早くもその姿勢が試される事態になった。

元画像とAIで生成された画像 朝日新聞より

  • 朝日新聞社は、10月3日付夕刊一面に掲載した「ウミガメの子 狙うタヌキ」写真を正式に取り消したと26日付夕刊で発表した。
  • 問題の写真は、屋久島のウミガメ保護団体から提供された動画を基に、画像作成者がChatGPTなど生成AIを使って鮮明化した加工画像だった。
  • 記事内容そのもの(タヌキがふ化したウミガメを捕食する事例)は正しいとされるが、AI加工によってカメの向きなどが実際と異なる部分が生じたと朝日は判断した。
  • 10月20日に同じ写真を配信していた共同通信も今月1日に「生成AIによる加工が判明した」として配信を取り消している。朝日はこれを受けて独自調査を開始していたとされるが、取り消しまでに約一カ月がかかった。
  • 朝日新聞は9月29日に「AIに関する考え方」を公表し、AI利用の透明性と信頼性を強調していたが、その直後にAI加工写真を鵜呑みにする失態となり、姿勢が問われる格好になった。
  • ネット上では、かつての「沖縄サンゴ落書き捏造事件」を想起する声も多く、「朝日ならまた同じことをやらかすのではないか」という根深い不信が再燃している。
  • さらに、AIディープフェイクが今後社会に浸透していく中で、行政・企業がAIに騙される事態を朝日新聞が報じても、追及の正当性が揺らぐのではないかとの懸念も指摘されている。

今回の写真取り消しは、単なる1枚のミスにとどまらない。報道機関がAI加工の見抜きに失敗すれば、メディアの信頼は一気に揺らぐ。特に朝日新聞は過去の不祥事の記憶も重なり、読者の目は厳しい。生成AIが当たり前に使われる時代、報道側が強固なチェック体制を構築できるかどうかが、今後のメディアの存続を左右することになる。

朝日新聞社