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2024年1月、新NISAが始まった。
証券口座の開設数は過去最高を更新し、「オルカン」だの「S&P500」だのという単語が、居酒屋でも聞こえるようになった。投資が「お金持ちの趣味」から「普通の人の習慣」に変わりつつある。
『奪われない!お金を守る7つの習慣:金融犯罪対策のプロが教える[これからのマネーライフ]』(千葉祥子 著)きずな出版
これ自体は、いいことだと思う。銀行に預けても年利0.001%の時代だ。物価は上がる。給料は上がらない。投資でもしなきゃ、やってられない。
でも、ちょっと待ってくれ。最近、妙な話をよく聞く。
「ネットで見つけた証券会社で口座を開いたら、なんか変だった」
「友達に紹介されたFXの会社、出金できなくなった」
「SNSで知り合った人に勧められて100万円入れたら、連絡取れなくなった」
全部、詐欺だ。
新NISAブームに乗じて、詐欺師たちも大忙しらしい。彼らは賢い。「投資を始めたいけど、何からやればいいかわからない」という人を狙い撃ちにする。親切に教えてくれる。丁寧に説明してくれる。そして、信頼させてから、奪う。
先日、Xで流れてきた投稿が印象的だった。
「新NISAで月3万円積み立て始めました!」という報告に、見知らぬアカウントが「もっと効率的な方法ありますよ、DMください」とリプライしていた。
これ、典型的な手口だ。本人は親切のつもりかもしれない(そんなわけないが)。でも、あのリプライの先には、ほぼ確実に詐欺がある。
問題は、被害者が「自分は騙された」と気づきにくいことだ。
「投資だから、損することもある」と思ってしまう。最初は少し利益が出る仕組みになっている。「ほら、ちゃんと増えたでしょ?」と見せられる。それで信用して、もっと入れる。そして、消える。
私たちは「稼ぐ」「増やす」「貯める」の話ばかりしてきた。
書店のマネーコーナーを見てほしい。「年収○○万円からの資産形成」「30代からの投資入門」「老後2000万円問題を解決する」——。増やす本ばかりだ。守る本がない。
いや、あるにはある。でも地味だから売れない。「詐欺から身を守る方法」より「10倍株の見つけ方」のほうが、読みたいに決まっている。人間の欲望は正直だ。
でも考えてみてほしい。
10年かけて500万円貯めた。それを1回の詐欺で失う。取り戻すのに、また10年かかる。下手すれば、取り戻せない。
「増やす力」と「守る力」。どっちが大事か?
両方だ、と言いたいところだが、実は違う。守る力のほうが大事だ。増やすのは時間がかかる。でも失うのは一瞬だ。マイナスからのスタートは、ゼロからのスタートより遥かにきつい。精神的にも。
じゃあ、どうやって守るか。「うまい話は疑う」「知らない人を信用しない」「急かされたら断る」「少しでも変だと思ったら、一晩寝かせる」ということだ。
新NISAは素晴らしい制度だと思う。個人が資産形成する機会が広がった。でも同時に、狙われやすくもなった。
守れなければ、増やしても意味がない。せっかく頑張って貯めたのに。せっかく勉強して投資を始めたのに。それを一瞬で失うなんて。
だから、守れ。自分の金は自分で守れ。誰も代わりにやってくれない。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)








