利用率低下に悩むハローワーク職員が偽名で応募し就職件数を水増しか

東京都内の公共職業安定所で、職員が求職者になりすまして企業に応募し、就職件数を水増ししていた不正が明らかになった。人手不足が深刻化し、民間の転職サイトに利用者が流れる中、ハローワークの利用率低下が進む現状で、成果を重視する運用が不正を誘発したとの見方がある。

  • 厚生労働省への取材で、ハローワーク墨田の職業相談担当職員が偽名を使い、実在しない求職者の登録を2人分作成していたことが判明した。
  • この職員は登録した求職者名義で企業への応募を繰り返し、9社を紹介先として挙げ、うち4社で内定を得ていた。
  • 採用が決まった4社のうち複数は書類選考のみで内定に至り、その後すぐに辞退していたとみられる。
  • 不正は、職員がある企業の面接に自ら出向いた際、提出書類と実名が一致しないことに事業所が気付き、発覚した。
  • 自分の担当した求職者の就職件数を水増しする目的だったとみられ、厚労省は職員の処分を検討している。
  • ハローワークは求職登録時に本人確認を求めない運用であり、登録から応募、紹介までが一人で完結できる仕組みを悪用された。
  • 背景には、利用者減少の中で「紹介実績」の目標達成が重視され、達成率が問われる運用にも原因があるとされている。
  • 民間の転職サイトが普及した現在、利用率低下によって職員へのプレッシャーが高まっていたとの指摘もある。
  • 厚生労働省は、全国のハローワークで同様の不適切事案がないか調査を開始したと説明した。また、今回の水増しによって公表済みの有効求人倍率が変動することはないとの見通しを示している。

今回の不正は、本人確認の欠如という制度的な穴と、成果を数値で示すことを重視しすぎた運用が重なって生じたとみられる。人手不足と就労環境の変化で役割が問われるハローワークにとって、信頼の回復と仕組みの改善は急務となっている。