国会議員の経歴詐称は公選法違反

池田 信夫

profile_pho01-1蓮舫氏の国籍問題は、本人が「台湾籍を抜きました」といっただけで証拠が出てこない。いま台湾に彼女の籍が残っていたら二重国籍だが、もし中華民国籍(日本では中国籍)を喪失していたとしても、読売テレビの番組で「私は生まれたときから日本人です」と答えたのは、経歴詐称の疑いがある。

彼女の公式ホームページには、この写真とともに「1967年 東京都生まれ 台湾人の父と日本人の母との間に生まれる」と書かれている。当時の国籍法では、日本で生まれた子は自動的に父親の国籍になるので、彼女は生まれたときは台湾籍(中華民国籍)だったはずだ。日本国籍を選ぶことができるのは、両親が正式に結婚していない場合に限られる。

彼女のホームページの2013年版(魚拓)には「1985年 台湾籍から帰化 帰化するまで謝蓮舫という名前で、今でも謝姓に愛着と誇りを感じている」と書かれていたが、なぜか今は抹消されている。この「帰化」は正確には「日本国籍を選択」だが、「台湾籍」だったという認識はあったわけだ。

二重国籍には罰則はないが、国会議員の経歴詐称は公職選挙法違反(虚偽事項公表罪)である。公選法235条では、次のように罰則も定めている。

公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。

彼女の「生まれたときから日本人」という答と「台湾籍から帰化」という記述は矛盾しており、どちらかが誤っている。謝という姓から考えると、過去の記述が正しいと思われる。現在の答が嘘だとすれば、公選法違反だ。過去にも経歴詐称で議員辞職した衆議院議員起訴された参議院議員がいる。

いま彼女が「私は日本人です」というのは、戸籍に国籍が「日本」と書かれているという意味では正しいが、「18歳のとき籍を抜きました」というのは事実に反する。台湾の国籍法では、満20歳にならないと国籍喪失の許可は出ないからだ。

今まで蓮舫氏が「質問の意味がわからない」といった答を繰り返していることから考えると、彼女は日本国籍を取得したことで自動的に台湾籍を抜いたと錯覚している疑いが強い。それは過失だとしても、「生まれたときから日本人」は経歴詐称である。

公式サイトの記述を削除したことから考えても、これは勘違いとは考えにくい。選挙向けに「台湾籍」という経歴を隠して「生まれたときから日本人」と言っているとすれば、彼女は公選法違反で起訴される可能性がある。有罪が確定したら、議員の資格を失う。

各社がすでに取材しているので、今週中には事実が明らかになるだろうが、その前に彼女がみずから事実を明らかにすべきだ。他にも二重国籍の議員がいるといわれるので、民進党も調査すべきだ。

追記:読売テレビの番組で蓮舫氏が「国連の女子差別撤廃条約を批准して…」といって遮られたのは、旧国籍法の父系主義(母親の国籍は選べない)を批判しようとしたものと思われる。これは1985年から改正されたが、その後に日本国籍を選択しても国籍法は遡及しないので、「生まれたときから日本人」にはならない。

追記2:彼女は「帰化ではなく国籍取得だ」と強調している。1972年に日本は台湾と断交して中華民国を認めていないので、彼女は「無国籍から日本国籍を取得したので、生まれたときから日本人」と思った可能性もあるが、これも誤り。1972年以降も台湾人には「中国籍」があるので、実質的には「台湾籍から帰化」したのと同じ。