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墓じまいの話である。今回は「納める」費用の話。こっちのほうが、選択肢が多いぶん悩ましい。

「墓じまい 何をすればいいのか、教えてください!」(吉川 美津子 著)WAVE出版
新しく墓石のお墓を建てる場合、100万から350万円が平均だという。都市部なら500万円を超えることもある。正直、家が買えるんじゃないかと思う金額だ(買えない)。
ここで出てくるのが「永代使用料」という言葉。墓地の区画を使う権利を買う費用だ。所有権ではない。使用権。つまり、土地は自分のものにならない。売れない、貸せない、返しても金は戻らない。1区画55万から130万円。関東エリアは平米単価60万円、北海道・東北は35万円。東京と地方で倍近い差がある。
そういえば、と思い出す。実家の墓は関西にある。平米単価14万円のエリアだ。安いほうだったのか。知らなかった。
話を戻すと、墓石を建てる以外の選択肢も増えている。永代供養墓、樹木葬、納骨堂。最近よく聞く名前だ。
永代供養墓は1体あたり5万から70万円。樹木葬は5万から150万円。納骨堂は棚式で10万から20万円、自動搬送型なら80万から150万円。幅が広すぎて参考にならないと思うかもしれないが、これが現実である。施設の立地、設備、サービス内容で全然違う。
ただし、落とし穴がある。これらの価格、「1体あたり」で表示されていることが多い。ご先祖が5人いれば5倍になる。当たり前の話だが、見落としがちだ。パンフレットの「5万円〜」に釣られて問い合わせたら「お宅は6体ですから36万円になりますね」と言われた人を知っている。
さらに安く済ませたいなら、海洋散骨や手元供養という手もある。海洋散骨は業者に頼んで4万から40万円。船に乗るか乗らないか、貸し切りか合同か、で変わる。
手元供養なら骨壺を家に置くだけだから、ほぼタダ。ただし、アクセサリーに加工するなら別途費用。遺骨をダイヤモンドにするサービスもあるらしい。値段は聞かないほうがいい気がする。
ここまで書いて思うのは、選択肢が多いのは良いことなのか、ということだ。
昔は「お墓」といえば墓石だった。選びようがなかった。今は永代供養墓、樹木葬、納骨堂、散骨、手元供養……。どれを選んでも正解に見えるし、どれを選んでも後悔しそうな気もする。
結局のところ、何を重視するかだ。費用なのか、アクセスの良さなのか、管理の手間なのか、故人の希望なのか。全部を満たす答えはない。あったら誰も悩まない。
一つだけ確実なのは、年間管理料を滞納すると、せっかくの永代使用権も消えるということ。無縁墓として撤去される。永代とは何だったのか、という話だが、そういうルールなのだから仕方ない。
お墓の問題は、突き詰めると「誰が管理するのか」に行き着く。自分か、子どもか、寺院か、業者か。その答えによって、選ぶべき改葬先も変わってくる。
正解はない。でも、後悔の少ない選択はできるはずだ。そのために、まずは相場を知ること。比較すること。そして、家族と話すこと。面倒だが、それしかない。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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