少子化対策の必需品、ヒト型ロボット

クリスマスなので少し夢のある話でもしましょう。

私がゼネコンで現場担当だった頃、その一つに日産の座間工場がありました。同工場は80年代後半、最新鋭のロボット化を進めたところで、記憶が正しければ日本で最も先端を行く工場でした。その後、どの企業でも工場におけるロボット導入がぐっと進んだのはご承知の通りで、今や、広大な工場で人を探すのが難しいと言われるほど機械化、ロボット化が進んでいるところもあります。

日本はロボットにおいてはソニーのAIBOとかホンダのASIMOがペット型とかヒト型ロボットを開発し、テレビでは学生たちがロボットの開発をしてその出来具合を競う大会が放映されるなど未来への期待とロボット大国として世界の最先端を走っていたはずでした。

が、近年、中国のヒト型ロボット(ヒューマノイド)の出来具合があまりにも優れ、中国で開催されたヒト型ロボットのかけっこ競争の番組では思わず、見入ってしまうほどでした。以前にもお伝えしたと思いますが、このロボットというハードウェアに今、AIという頭脳を搭載することが最先端のトレンドとなっています。これをフィジカルAIと言います。フィジカルは身体という意味ですからボディにAIを装着したという意味で自律的稼働ということになります。我々昭和の世代からすれば小さい頃に読んだりテレビで見たSFの話の時代が本当に到来したという感じであります。

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2026年のテーマの一つにこのフィジカルAIが入ってくる可能性は高く、私の中では本命の1つであります。なぜならAIそのものが収益を生みにくいとされてきた中でヒト型ロボットは無限に稼ぐ力があるからです。例えば運送業界で取り沙汰されるラストワンマイル問題。これも最後はヒト型ロボット君に配達してもらえばよいでしょう。警察だって使えるかもしれません。犯人が拳銃を持って立てこもるところに突撃するのにロボット君に行ってもらうことも可能。それを言うなら戦争だってそれこそ、ゲームの世界と同じようにロボットが先陣に立つことも可能です。

ところで、報道によると2025年の日本の出生者数は66.5万人程度になりそうだとあります。平均寿命を90年とすれば単純計算で45年後である2070年は5985万人しかいません。現在の人口の半分を割る水準です。これでは現在の日本経済を維持することは不可能なのです。人口が減って何が問題なのか、という方は多いと思います。一言で言えば日本は人口1億2千万人ベースのインフラを作り上げたのです。上下水や電気、橋から建物や家屋、商店や鉄道まで全てです。これが45年後には実質的に半分しか使う必要がないにもかかわらず、それを維持メンテする必要があるのです。これに膨大な労働力とコストがかかるのです。これが賄えないということです。

とすれば日本はこのヒト型ロボットのメリットを世界で最も享受できる国の一つになるはずです。数年前、クローン人間が話題になりました。これは医学的に同じDNAを持つような人間を作り出すことで、倫理上、問題があると指摘されました。ところが自分と同等の頭脳を持つヒト型ロボットの開発については今のところ、規制は敷かれていないのです。AIは広範なデータベースから物事を判断するのですが、徐々にその利用者の目的や性格、思考や指向、更にし好を習得し、カスタマイズすることが可能なので実質的にクローン化することは可能だと思います。

私が生きているうちにヒト型ロボットが街を闊歩している時代が来るような気がします。変な話ですが、少子化対策の必需品はこのヒト型ロボットなのだとみています。

私は介護事業の世界に踏み込んでいますが、数年前までは人の介護は人がするもの、と考えていたのですが、最近、その考えを変えています。例えばコンパニオンシップというサービス、つまりお話相手や認知症の方の行動把握、会話や食事の管理は実はなかなかの作業であり、これをご家族にしろ、介護の方がやるにしろ、生身の人間がやるには負担が大きいのです。もしもAIロボット君が認知症の方の家に24時間住み込みならばおしゃべりから過食のコントロール、お散歩支援や一部の判断の代行までできるはずです。

ところでいつも思うのですが、ヒト型ロボットはなぜ、いつもハダカなのでしょうか?介護やラストワンマイルの配達をするようなヒト型ロボットには服を着せよ、と思うのです。するとイメージが全く変わり、ヒトとの接触が非常に受け入れやすくなるでしょう。

エヌビディアの幹部曰く、日本のヒト型ロボットの開発は米中に比べ相当遅れていると指摘しています。ロボットのハードを作る能力やインフラは十分あるのに完成品ができないのです。これは携帯電話で日本が技術的に世界トップだったにも関わらず、iPhoneが日本の一世代前の技術を使って一世を風靡した話と同じなのです。

なぜ日本は出来ないのでしょうか?私が言うと語弊があるかもしれませんが、たった一言で終わります。枠からはみ出せない、これだけです。ルール設定と枠組み作りが日本人のメンタルで大好きなので常識を飛び越えたイマジネーションの領域に踏み込みにくいのでしょう。でも今、日本も変わりつつあります。きっと何かの拍子に変わることを期待しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月25日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。