海外ビジネスは行く前に8割が決まる:成功する会社が必ずやっている3つの準備

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2026年の年頭にあたり、本稿が海外ビジネスを考える一つの視座となれば幸いである。

年が改まると、多くの企業で「今年は海外を強化する」「新市場に挑戦する」といった方針が語られる。海外展示会への参加、現地パートナー探し、視察計画の立案など、年初は動き出しの季節である。

しかし実務の現場を見ていると、海外ビジネスの成否は、現地に行く前の段階で八割方決まっていると感じることが少なくない。語学力や交渉力、現地人脈以前に、日本国内での準備の質が結果を左右しているからである。

海外ビジネスというと、「まずは現地に行ってみることが大事だ」と語られることが多い。確かに、文化や商習慣、相手の空気感は現地でしか分からない部分もある。しかし、実務の視点で見ると、海外案件の成否の多くは、現地に行く前の段階でほぼ決まっている。

海外で失敗する企業に共通するのは、準備不足ではなく、「準備の方向性」を誤っている点だ。市場調査や人脈作りに力を入れる一方で、判断の土台となる設計が曖昧なまま進んでしまう。結果として、話は進んでいるのに決断できない、あるいは後戻りできない局面で問題が噴出する。

では、海外ビジネスで安定して成果を出している会社は、何を準備しているのか。共通しているのは、次の三点である。

第一に、規制・制裁リスクの整理である。

輸出管理や制裁規制は、専門部署だけが意識すればよい問題ではない。どの国の規制が関係し、どこがグレーで、どこが明確にアウトなのか。その全体像を経営レベルで共有しているかどうかが、後の判断を大きく左右する。ここが曖昧なままでは、案件が進むほど判断が難しくなる。

第二に、取引スキームの明確化だ。

誰が取引主体なのか、責任はどこに帰属するのか、代金回収が止まった場合に誰がリスクを負うのか。こうした点を「商社がいるから」「現地パートナーがいるから」と曖昧にしたまま進めると、トラブルが起きた瞬間に責任の押し付け合いが始まる。成功している会社ほど、最初にこの線引きを明確にしている。

第三に、社内の意思決定構造の整理である。

海外案件では、「誰が最終的に進めるか、止めるかを判断するのか」が極めて重要だ。営業、技術、管理がそれぞれ部分最適で動いている組織では、最後に判断が宙に浮く。成功する企業は、判断権限と責任の所在を、案件の初期段階で言語化している。

海外ビジネスは、勇気や勢いで突破するものではない。

むしろ、行く前にどれだけ整理できているかが、結果の八割を決める。

現地に行くことは重要だが、それは準備が整っていて初めて意味を持つ。準備なき現地訪問は、単なる確認作業に終わり、決断を先送りする理由を増やすだけだ。

新しい年の始まりに、海外ビジネスを考えるのであれば、まず問うべきなのは「どこに行くか」ではない。自社は、判断できる状態にあるのか。そこからすべてが始まる。