ロシアによる侵攻が長期化するなか、ウクライナの安全をどのように確保するかは、停戦や和平交渉の成否を左右する重要な論点となっている。とりわけ、米国がウクライナにどこまで関与し、安全保障を保証するのかをめぐって、国際社会では議論が活発化している。
ゼレンスキー大統領、米国による長期保証を提案
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、ロシアとの戦争終結に向けた和平案に関し、米国が15年間にわたりウクライナの安全を保証することを前提としていると明らかにした。会見では、トランプ米大統領に対して最長50年に及ぶ安全保障の提供を求めたことも伝えた。
さらにゼレンスキー大統領は、和平協定が成立した際には、各パートナー国が迅速にウクライナの安全を保証することが不可欠であるとの認識を示し、この安全保障の枠組みを和平実現の前提条件として位置づけている。
米国・欧州諸国とウクライナの協議
一方、12月15日には、米国や欧州諸国、ウクライナの代表団がドイツ・ベルリンで戦争終結に向けた協議を行った。協議の結果、米国側はNATO条約と同等の安全保障をウクライナに提供する用意があると表明し、議論はより具体的な段階へと進展した。
この発言はウクライナにとって重要な政治的支えとなる一方で、米国が実際にどの程度関与するのかという疑念を呼び起こす面もある。
専門家の指摘:抑止力低下のリスク
こうした安全保障の保証に対しては、慎重な意見も根強く存在する。米国の安全保障専門家の間では、米国が中心となるウクライナへの安全保障の提供が、かえって抑止力の信頼性を損なうおそれがあると指摘されている。
専門家らは、米国が正式な同盟国でない国家に対して長期的な軍事介入を約束した場合、危機が発生した際に実際に米国が行動するのか疑問が生じやすいと論じる。その結果、ロシア側が米国の関与を「空約束」と受け止める可能性があり、抑止が十分に機能しなくなる恐れがあるという。
現実的な選択肢としての「拒否的抑止」
米国による安全保障の保証は、政治的にはウクライナに大きな安心感を与える。しかし、その実行可能性と信憑性には依然として疑問が残る。約束が信じられなければ、抑止は成立せず、かえって地域の不安定化を招く可能性もある。
そのため、全面的な防衛義務を伴う保証よりも、イスラエルや台湾に対する支援のように、軍事能力の強化や継続的な支援を通じて相手国の行動を思いとどまらせる「拒否的抑止力」を高める枠組みの方が、現実的かつ持続可能であると考えられる。
ウクライナの安全を確保するうえで、象徴的な約束ではなく、実効性のある抑止の形が問われている。

12月29日 トランプ大統領と会談するゼレンスキー大統領 ゼレンスキー大統領インスタグラムより






