8月下旬から八幡和郎さんが本サイトで指摘してきた蓮舫参議院議員の二重国籍疑惑は、昨日(9月6日)、蓮舫氏の関係者が東京都内にある駐日経済文化代表処(大使館)を訪れ、台湾籍の放棄の手続きを行い、大きく展開しました。蓮舫氏の発表を受け、テレビ、新聞も報道するところが増えてきました。
しかし、八幡さんも抗議するように、「一部で指摘されたのをきっかけに問題化した」といったトーンで報道されており、いち早く問題を指摘した八幡さんと、八幡さんの寄稿先である本サイト、夕刊フジの出所について明記されておりません。
夕刊フジを除いて、最初に取り上げたマスコミは系列の産経新聞の電子版。
--出身の台湾と日本との「二重国籍」でないかとの報道がある。帰化していると思うが…
「帰化じゃなくて国籍取得です」
取材時にやりとりでは、夕刊フジやアゴラの媒体名は言及されたかもしれませんが、ここでは「報道がある」にとどまっており、きのう(6日)朝刊本紙に掲載された時点でも下記のような記述になっています(下線は編集部)。
民進党代表選(15日投開票)で深刻な問題が浮上している。出馬した蓮舫代表代行に、日本国籍と台湾籍とのいわゆる「二重国籍」でないかとの指摘があり、その疑問が完全に解消されないのだ。
つまり、誰が、どの媒体が指摘したのか主語が抜け落ちています。
さらに、テレビで最初に取り上げた読売テレビの「ウェークアップぷらす」でも、キャスターの辛坊治郎氏が蓮舫氏に質問する際、このような言及でした。
辛坊「結論によってはどうでもいい話だと思うんですが、一応、蓮舫さん伺っておきます」「週刊誌やネットで二重国籍で台湾籍をお持ちなんじゃないかっていう話があります、これについては?」
辛坊氏の触れ方は、主語がまだあるだけで多少マシかもしれませんが、「ネット」といっても、既存メディアと同じく、ジャーナリストや専門家が実名で投稿するネットメディアもあれば、匿名の不特定多数ユーザーが書き込める掲示板の類まで幅広く、どうもこのあたり、ネットメディアの編集長も歴任したはずの都知事選候補者がハフィントンポストのインタビューに対して「ネットはしょせん裏社会」とみなしたような価値観を感じるのは穿ち過ぎでしょうか。
辛坊氏、産経新聞だけでなく、その後に報じ始めたマスコミについても同様にソースについて言及せず、それどころか誰が「指摘」したのかすら主語が抜けている報道もあります。
この背景にはメディア業界のヒエラルキー的な意識が恐らくあり、類似の事例としては、週刊誌報道が報じたスクープを新聞、テレビが後追いする際に「一部週刊誌」「一部報道」などのワードを使って報道し、週刊誌サイドが抗議するという構造が長年放置されてきました。元日経記者で、ジャーナリストの牧野洋氏らが以前から指摘し、最近は、政治家の金銭スキャンダルを報じた週刊文春がテレビ朝日に抗議して一定の改善がみられたものの、ネットメディアの存在はいまだに黙殺されているのが実情です。
筆者もかつて大手新聞の記者を経験したので、他メディア、ましてや「週刊誌以下」にみなしているであろうネットメディアをソースとして扱うことが「屈辱的」だというのは想像がつきますが、こうした問題を指摘するのは、ことさら実績を強調したいからとかいう下世話な話ではなく、現状放置は健全ではないと考えるからです(牧野氏の記事等によると、欧米のメディアでは出所を明記)。
辛坊治郎氏、産経新聞に対しては、典型例として名前を出しましたが、少なくとも最初に問題点を指摘した八幡和郎さんの名前すら出そうとしない報道各社の姿勢に対し抗議し、ソースを明らかにするよう改善を求めたいと思います。
なお、ネットメディアでは、バズフィード日本版が、国籍問題に関してアゴラと異なる論調であるものの、当初から報道経緯をまとめた記事において「まず、この問題に着目したのは「アゴラ」だ」と明記しております。
アゴラ編集長 新田哲史
※アイキャッチ画像は産経新聞朝刊(9月6日)の一部を引用
(追記9月8日7:45)けさの朝日新聞朝刊3面「蓮舫氏の台湾籍放棄 何が問題なの?論点を整理」の中で、問題になった経緯の記述で、出典を明記しました。
蓮舫氏への批判が広がったのは、元通産官僚の大学院教授の指摘を、ネットの言論サイト「アゴラ」が取り上げ、夕刊フジが報道したのがきっかけ。産経新聞は6日付朝刊で「蓮舫氏くすぶる『二重国籍』」との見出しで、「深刻な問題が浮上している」と報じた。
八幡さんの名前を匿名にした意図は謎なのと、山田肇さんが指摘するように法解釈を巡る論調に差異はあるものの、ソースを明記したことは評価したいと思います。