40代からは「消費」を降りて「生き方」を買う

黒坂岳央です。

30代までの人生は、いわば「足し算」の時代である。まだ見ぬ世界を知るため、がむしゃらに働き、稼いだお金で新しい経験やモノを買い漁る。これは誰もが通る道であり、物欲を満たし続けるフェーズは人生序盤に厚めにやってくる。

だが、40代でその生き方は変わる。人生の折り返し地点が見えてくると、「物質的な消費から得られる幸福」の限界値が見えるのだ。

必要なものは一通り揃っている。かつて憧れた上質アイテムに届かないわけではないが、そこまでほしいとは思えない。では自分はこの先、人生で何にお金を使えばいいのか?

このようなある種の絶望にぶつかるのが中年だ。40代からは、ただ闇雲に消費するステージを降り、お金を使って「自分の生き方」そのものをデザインするステージへと移行する。

Edwin Tan/iStock

お金を使う中年、使えない中年

「そんなことはない」お金をガンガン使いまくって資金ショートする人や、横領に手を染めてまで集金する人もいるではないか」という反論は当然、想定しているし、自分の周囲にも稼いだお金を全部使ってしまい、常にお金に困っている中年はいる。

自分が言っているのは「40代はお金の使い道がなくなる」のではなく「自分一人の閉じた消費先が消える」と言っているのだ。

だから中年以降も猛烈にお金を使う人は必ず、他者との接点がある。異性関係に狂って資金を溶かしたり、見栄で背伸びした買い物をする人、ビジネスの事業拡大を考えている人などは必ず「他者」との接点がある。

だが、この他者とのつながりがなくなる年代もまた、40代からであり、多くは20代や30代と違って消費先が1つずつ感情の衰えとともに消えていく事が多い。かといって、自分の感情をビビッドに刺激する新規開拓も簡単ではない。結果、持て余すということなのだ。

「消費」の限界

お金には「限界効用逓減の法則」がある。簡単にいうと「お金は増えれば慣れていく」というものである。昔は「年収は800万円で頭打ち」と言われていたが、その後の調査で「実際は青天井だ」という意見もあるようだ。しかし、個人の肌感覚でやはり、天井はあるように感じてしまう。

例えば、ホテルの宿泊を考えてみる。貧乏だった頃は「最安値」で出てきた宿へ泊まっていた。それがカプセルホテルだろうが、ユースだろうが何でも構わなかった。なんなら夜行バスで夜間移動する間を「宿泊カウント」をしていた。

それが1泊1万円のビジネスホテルになり、そして10万円以上の高級旅館にステップアップしていくのは少しずつ、自分の社会的ステータスが上がったように思えて嬉しい感覚があった。確かに価格が上がるごとに、得られる感動や快適さは飛躍的に向上する。

だが、1泊30万円を超えるとどうか。もちろんサービスは手厚くなるが、10万円の宿で得た感動が3倍、10倍になるわけではない。たとえば10万円と30万円の部屋を比べると、追加で大きな部屋があったり、眺めが良かったりする違いであることも多い。「別にこの差に20万円までは出さなくてもいいかな」と思えてくる。慣れてくると価格のその先の景色が「先読み」できるようになる。

飛行機のクラスも同様である。エコノミーからビジネスへの転換は、移動後の体力温存という意味で、価格分の価値がある。到着初日、睡眠不足では1日潰れてしまうので、機会損失を考えると往路はビジネスの価値は高い。

だが、ビジネスからファーストクラスへのアップグレードは、価格が倍以上になっても、得られる価値は「少し広い座席」や「高級なワイン」といった微差の積み上げに過ぎないと思える。自分のように酒を飲まず、機内では本を読むか寝るだけの人には、あまりこの差は享受できない。少なくとも一人でビジネス出張へ行く人はファーストクラスは不要だと感じるケースが多いのではないだろうか。

お金で「物」ではなく「生き方」を買う

消費の最前線を退いた後、我々はお金をどこへ向けるべきであろうか。それは、以下の3つの「目に見えない資産」である。

1つ目は環境である。生きをしているだけでお金がかかるのは、住居である。「お金がかかるから要らない」と思っていても屋根付きの住居はどんな人にも必ずかかる。そして人生の快適度や発展性を決定的にする要素だと思うのだ。

住居は部屋が静か、広い、といった要素の他に「コミュニティ」という周辺環境も大きく影響する。人は付き合う人でレベルが決まるが、自分が住んでいる住環境で強い影響を受ける。周辺に騒音を出す人が住んでいたり、排気ガスを吸わされたり、セキュリティに懸念があるとそうして受け続けた小さなノイズの影響が出てしまう。

だから筆者はあえて「駅から離れているので不便」と言われる地域に住んでいる。自分には通勤がないので、多少不便な方が都会の喧騒がなくていい。そして今の静かな環境を得たことで、独力の仕事に良い影響があったと思っている。

2つ目に健康だ。30代までは「無料」だった健康が、40代からは「有料」の資産に変わる。とはいえ、莫大なコストは要らない。プロテイン習慣を取り入れてタンパク質を充実させ、しっかりと眠り、そして運動習慣を作るのだ。

これらはそれほど多額のコストは不要だが、代わりに時間がかかる。40代にとって時間は実質的なコストそのものなので、結局運動などをするための時間投資は必要となるわけだ。40代からの健康は「投資」なので、しんどくてもやる気がなくてもやるしかない。サボれば寝たきり老人や病気の可能性がグッと近づく。

そして最後にライフワークへの投資だ。40代は「お金を稼ぐための仕事」であるライスワークではなく、人生をかけて取り組みたい「ライフワーク」へ投資を始めるべきである。

物質から価値を引き出せるピークが30代だとするなら、「経験や自己表現」から価値を引き出す能力は、40代からが本番である。だから筆者は40代からはみんな記事や動画で、それまでの人生を出力すれば良いと思っている。

これはお金を稼ぐため、というより半分は自己満足のためだ。アウトプットをする過程で頭が鍛えられ、発信力がつき、そして何より楽しい。気の合う人同士のつながりも生まれる。20代では発信するための人生経験が足りないことも多いが、40代となれば誰もがそれなりの経験を蓄えているので、発信者になることを心からおすめしたい。

40代以降は受動的な娯楽や、他人に誇示するための消費は、もう卒業である。物質的な豊かさは40代で大体一通り経験したり、手に入るのでそこからは「生き方の豊かさ」を買うフェーズである。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。