アクオス、亀山のブランドネームで日本市場を制したシャープの苦境ぶりが目立っています。早ければ今週にも台湾の鴻海グループとの提携内容の見直しについて発表があるものと思いますが、僅か数年で崖から落ち、瀕死の重傷になったシャープの経営不振の原因はどこにあったのでしょうか?
これは言うまでもなく昨年7月の地上デジタル移管に伴う政府からの補助金政策であったエコポイントがトリガーになっていると思います。エコポイントは2009年5月から2011年3月まであり、エコ製品に対して様々な商品と引き換えられる特典が発表されました。そのエコポイントの主たる対象商品はテレビでした。
日経新聞によれば国内で1億台のテレビのうち、2009年から2011年までの3年で6000万台が買い換えられたとされています。結果としてテレビの寿命が5年なら残り4000万台に対して5年で需要を作り出すのですから年間わずか800万台の需要という数字になってしまうと記事に出ております。
ただ、この日経の記事の想定は私は甘いと思っています。なぜなら1億台のテレビがあったとしてもそれは退蔵されているテレビを含むと考えるべきだということ、それと若い人はテレビではなくパソコンの画面を通じた楽しみ方に移行していることを差し引いていないということです。また、テレビの寿命は5年ということはないと思います。
つまり、今後のテレビ需要は必要に迫られた人しか買わないだろうという事になります。
もう一つ、いやな話としてはテレビの品質が内外製品で差異がなくなってきたということです。つまり、家庭内で二台目、三台目の需要があるとすれば居間に鎮座している立派なテレビぐらいはブランド名を大切にするとしても他の部屋の分は安ければ海外製品でもOKとする動きが必ず出てくるということです。
となれば、やはり、地上波移行に伴うエコポイントがテレビの需要と供給の自然な流れを壊し、「液晶テレビバブル」を作り出したと考えるのがナチュラルだということになります。
私はこのブログでエコカー補助金、さらには最近では超小型車への50%にも及ぶ補助金について大きな疑問を呈してきました。それは業界が甘い汁を求め、政治家を通じて間違った政策をぶち上げてしまったことにあります。
自動車業界もエコカー補助金が9月までの予定の補助金はほぼ枯渇していると思います(たしか、ディーゼル自動車対象の補助金だけが残っていてマツダが唯一、その恩恵をうけると理解しています)。結果として、自動車業界は反動で販売減に伴う値引を強要されるわけです。これでは何のための補助金なのか良く分からなくなるのです。
実は日本には経済産業省など省庁が一定業界、産業に多額の補助金、助成金などを提供する流れが脈々と続いており、それらの悪慣行を止められない状況にあります。それは補助金行政が当たり前でビジネスを有利に進める梯子が用意されているということです。
かつてシャープなくして液晶なしとも持ち上げられていた姿はジュリアナ東京で踊り狂っていたお立ち台の女性と重なって見えるのは、バブル崩壊をまざまざと見せつけられた我々の世代にしかわからない絵図かもしれません。とすれば日本はバブル崩壊から学んでいないという事にもなるのでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。