なぜ日本企業の海外案件は止められないのか:決裁構造が生むコンプライアンス破綻

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海外案件で問題が発覚したとき、よく聞かれる言葉がある。

「ここまで進んでしまった以上、もう止められない」。

輸出管理や制裁リスクが指摘されても、案件は進み続ける。

なぜ日本企業では、こうした状況が繰り返されるのだろうか。

原因は担当者の判断力や勇気の問題ではない。決裁構造そのものが、“止められない”設計になっていることにある。

多くの日本企業では、海外案件は次のように進む。

営業が話を持ち込み、技術が仕様を詰め、管理部門が最後に確認する。

一見、合理的な分業に見えるが、この構造には致命的な欠陥がある。それは、「止める判断」が最後にしか登場しない点だ。

案件が初期段階であれば、止めることは容易だ。だが、契約条件が固まり、顧客との関係が深まり、社内外に説明が済んだ段階で「実は問題がある」と言うのは、非常に難しい。

このとき、現場では必ずこうした空気が生まれる。

「今さら言うな」
「もっと早く分かっていれば」
「今回は例外で進めよう」。

こうして、グレーな判断が積み重なっていく。

海外規制当局が問題視するのは、こうしたプロセスだ。彼らは「なぜ止めなかったのか」を問う。そして、多くの場合、企業は明確な答えを持っていない。

止められない組織の特徴は明確である。

  • 判断権限が曖昧
  • 止める基準が存在しない
  • 止めた人が評価されない

この三点が揃うと、コンプライアンスは機能しない。

海外ビジネスで成功している企業は、逆の設計をしている。案件の初期段階に、止める権限を持つ人間が関与し、「どこで止めるか」を先に決めている。

止めることは、失敗ではない。

むしろ、止められた案件こそが、組織の健全性を示す証拠である。

海外案件が止められない会社は、いつか外部から止められる。それが規制当局なのか、銀行なのか、市場なのかは分からない。

だからこそ、止める判断を、組織の中に取り戻す必要がある。