黒坂岳央です。
「嫌なやつほど、なぜドンドン出世していくのか?」
筆者は昔、ずっとこれが謎だった。複数社の複数の部署で色んなポジションで働いてきたが、必ずといっていいほど、どの会社でも嫌なやつが上に行く。
なぜなのか?それは出世は人柄ではなく、成果で決まるゲームだからだ。
会社でのポジションには数の限りがある。課長は一人、部長は一人、評価される枠も有限だ。
つまり出世とは絶対的な競争であり、必ず勝者と敗者に分かれる。そしてこの競争を勝ち抜く行動が、周囲から「嫌なやつ」と受け取られやすい性質を持っているだけだ。厳密に言えば、嫌なやつが出世するのではなく、出世する結果を出す人間の行動が、嫌だと感じられやすいというだけである。

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嫌なやつが勝つ3つの理由
嫌なやつは出世競争に勝つ。同僚や部下から嫌われても上司や会社は彼らを評価する。つまり、出世というルールでは彼らは部下に勝っている現実がある。それには3つの理由がある。
1つ目は嫌われるコストを払えるためだ。普通の人間は嫌われることを恐れる。波風を立てたくない、評価を下げたくない、関係を壊したくない。その結果、言うべきことを言わず、押すべき場面で引き、取りに行くべき成果を見送る。
出世する人間はここが違う。嫌われるコストを計算した上で、それでも「言う・押す・奪う」を実行できる。遠慮は美徳ではなく、競争における自滅行為だと知っている。彼らは合理的に嫌われる道を選択する。
2つ目に主張回数が多いからだ。会議で一番発言する人間が誰の印象に残るかは明白だ。そして出世する人間は発言量が多い。これは必然的に、誰かの意見の上に立つことを意味する。
他者の発言を受けて「それよりこうすべきだ」と上書きし続けることで、存在感と主導権を同時に手に入れる。結果、他者の提案の上に乗るので嫌われやすい。
3つ目に意思決定をする。いわゆる「いい人」ほど決断が出来ない。Aさんの気持ち、Bさんの事情、Cさんのプライドを考慮しすぎて動けなくなる。嫌なやつは「そんなことは知らない、やれ」で進める。
スピードが成果に直結する現代の職場では、この姿勢が勝つ。ただし速い意思決定は必ず誰かの反対や不満を生み出す。反対を作ることを恐れない人間だけが、速く動き続けられるのだ。
そもそも、「手柄を横取り」「パワハラ」などは論外として、上司は普通に仕事をするだけで嫌われやすいのである。
本当の問題は個人ではなく制度にある
嫌なやつを憎んでも何も解決しない。問題の本質は、そういう行動を合理的な戦略として機能させてしまっている評価制度の設計ミスにある。
成果の帰属が曖昧、発言量と貢献度が混同される、上司の主観で評価が決まる。例えば、チームで10の成果が出たとき、そのうち7は現場が作っているのに、上司の報告資料では「自分が主導した」ことになっている。こういう会社では、仕事ができる人より“報告がうまい人”が勝つ。
こういった制度的欠陥が揃うと、嫌なやつの戦略が最適解になる。個人を責めるのではなく、そのゲームのルールに問題があると認識すべきだ。
そしてこの構造が続いた組織の末路は決まっている。現場の人間が本音を言わなくなる。情報が上に上がらなくなる。ミスが隠蔽される。優秀な人材から順番に辞めていく。
嫌なやつが上にいる組織は、短期的に成果を出しているように見えても、中長期では必ず弱体化する。
上司は意識してプラスを作る
強く言う。決める。押し切る。上に行く人間の仕事は、どうしても摩擦を生む。だからこそ、上司は意識して“別の場所”で信頼を積んでおく必要がある。
筆者の場合、尊敬する上司はそれをやっていた。時々、ランチに部下を誘って食事をご馳走してくれたり、「大丈夫か? 困ってない?」と残業していたら声をかける気遣いをするなどだ。
本当にちょっとした気遣いがあるだけでも、人は相手を心底嫌いにはなれなくなる。もちろん、それだけでは十分とは言えないが、どうしても嫌われ役を演じざるを得ない立場なので、意識してマイナス要素を薄めるプラス要素を出すことは重要なのだ。
◇
筆者の場合は、昔からパソコン好きで会社でもよくITシステム導入のリーダーを任されたりしていた。こうなると、上司は筆者の仕事がわからず、手を出せないのでその仕事は自分にとても低姿勢でお願いをして来たりする。
結局、究極の防御策はスキルを高めることだ。「この仕事は自分しか出来ない」という武器を得れば、嫌な上司も強く出られなくなるのである。
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