台湾は防衛費を増やせるか? :親中派野党が妨害し特別予算案が通らず

台湾が中国からの軍事的圧力や地域情勢の緊迫化を背景に、防衛費の大幅増額を目指す特別予算案の成立をめぐって政治的な膠着状態に陥っている。頼清徳総統が提示した総額約400億ドル(NT$1.25兆)規模の特別防衛予算案は、台湾の防衛力強化を図るうえでの中心的政策となっているが、親中派とされる野党勢力による審議妨害によって成立の見通しが立っていない。

2025年5月1日頼清徳・総統と会談した高市氏 高市首相Xより

頼総統が提案した予算は、ミサイル防衛網や防空システム、非対称戦能力の整備といった装備投資を含み、台湾の安全保障態勢の大幅な強化を目指すものだ。政府は防衛費をGDP比5%まで引き上げる方針を打ち出しており、装備調達は2030年までの計画として進行中だ。

しかし、立法院(国会)の大半を占める野党・中国国民党(KMT)とその支持層は、予算案の審議入りを繰り返し拒否している。この背景には、KMTの党首が中国との経済・政治的関係を重視する立場にあることがある。国民党は歴史的に中国との交流を重視し、「両岸関係の安定」を政策の中心に据えてきた。KMTの党首自身も中国との関係強化を支持する姿勢を示しており、軍事力強化策に慎重な姿勢を取ることが多い。

KMTや台湾民衆党(TPP)を中心とする野党勢力は表向きには「予算の透明性と具体性」を求めていると主張するが、実際には政府提案の大規模支出や米国からの兵器調達に慎重姿勢を崩しておらず、審議入りの条件として総統自身の説明を要求するなど、成立の遅延に積極的に関与している。

一時は予算案が委員会の審議入りに向けて前進するとの見通しも報じられたが、成立は依然として不透明だ。こうした政治対立は、台湾内部の防衛政策論争が単なる安全保障のあり方に関するものではなく、対中姿勢の違いに基づく政党間の戦略的対立の表れであることを示している。

頼総統が防衛費増額を訴える背景には、中国の軍事的圧力の高まりがある。中国は台湾を自国領と主張し、海空での圧力を強化しており、台湾政府は平時から防衛態勢を強化する必要性を強調している。また、米国からの兵器購入契約には期限があり、予算成立の遅れは装備調達にも影響を及ぼす可能性があると指摘される。

このように、台湾では防衛予算の成立をめぐって国内政治の対中姿勢の違いが安全保障政策の行方を左右している。台湾が防衛費を増やせるかどうかは、単純な軍事力の問題ではなく、政党間の戦略的対立と中国との関係を巡る政治的争いによって大きく左右される状況になっている。